藤原更『記憶の花』が刊行された。
愛知県津島市に生まれ、写真表現の可能性を拡張するような様々な技法やメディアを駆使した作品を制作し、国内外で作品発表を重ねる現代美術家・藤原更(ふじわら・さら)。
本書は、2024年4月にヤマザキマザック美術館で開催された同名の展覧会を、アーカイブした作品集であり、蓮、薔薇、芥子をモチーフにした代表作・花三部作を網羅している。鈴木潔(美術史家)、飯沢耕太郎(写真評論家)、坂上しのぶ(ヤマザキマザック美術館 学芸員)が文章を寄せている。
展覧会場が蘇るような、大胆で優雅な町口覚氏による造本も素晴らしい仕上がりになっている。
幽玄で幻想的な作品世界が読者の心に浸透してくる作品集となっている。
■収録作品(全30作品 2006〜2024年)
「Flow」:故郷の蓮田に注ぎ込む水の流れを映したストレートフォト。「命のはかなさと存在の輝き」を創作のテーマとする藤原更の原点。
「Neuma」:枯れ折れた蓮の姿に、やすらぎや希望を見いだすことが出来ないかと取組んだストレートフォト。
「La vie en rose」:鮮やかに咲き誇る薔薇の花弁を撮影。色温度と呼ばれる光の性質を利用して、色彩が巧みに操作されている。
「Melting Petals」:果てしなく眼前に広がる芥子の花が映された写真に、ライティング技術を駆使して様々な光をあて、藤原の脳裏に浮かびあがる記憶の花を表出。“ぼかし”や“剥離”を用いて、失われていく記憶を可視化している。
「Uncovered Present」:「Melting Petals」の画像をプリントする際、生乾きのインク表面をめくり上げ、内部を露出させた状態が映されている。
■プロフィール
藤原 更(ふじわら・さら)
愛知県津島市生まれ。現代美術家。1999年を境にコマーシャル・フォトグラフの分野からアートの世界へと踏み出す。国内外で作品発表。作品集に『Melting Petals』(私家版、2022)がある。近年の展覧会は「Timeless Colors」(松坂屋名古屋、2025)、「Photograph 記憶の花 藤原更 Sarah Fujiwara」(ヤマザキマザック美術館、2024)
藤原更『記憶の花』
2025年3月21日発行
寄稿:
鈴木潔(美術史家)
飯沢耕太郎(写真評論家)
坂上しのぶ(ヤマザキマザック美術館 学芸員)
造本設計:町口覚
発行:スタンダードワークス
発売:ふげん社
判型:B5判(257×182mm)
仕様:無線綴じPUR並製本
頁数:68頁
定価:6,380円(税込)
【関連リンク】
https://fugensha-shop.stores.jp/items/67c7ff33871146c2274f4a71
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