top スペシャルレポート千葉の老舗カメラ専門店のDNAを受け継ぐ「カメラ好きの集まるお店」がついに復活! ─カメラのリンクショップ(千葉県山武市)─

千葉の老舗カメラ専門店のDNAを受け継ぐ「カメラ好きの集まるお店」がついに復活! ─カメラのリンクショップ(千葉県山武市)─

2025/03/24
中村文夫

千葉県内唯一の政令指定都市でありながら、千葉市には中古カメラ専門店が意外と少ない。それだけでなく東京のベッドタウンとして多くの千葉都民?を抱える船橋市や松戸市なども同様で、すぐに頭の中に浮かぶ店はごくわずかだ。
 

しょっちゅう東京に行っているから、わざわざ地元の店に行くまでもない、というのが千葉市民の常套句だが、千葉と同じく東京に隣接する神奈川県の横浜には大貫カメラやカメラはスズキに代表される老舗に加え、ワットマンカメラなどの新規参入組が立派な中古カメラ散策コースを形成。千葉市民の私としては忸怩たる思いがある。
 
こんな厳しい状況で、千葉市の中古カメラ文化を守り続けてきたのがカメラのリンクショップ。そのルーツは昭和の半ばから平成にかけて東京や東葛地域で手広く商売をしていたハナシマ商会に遡る。だが同社は98年頃に廃業。当時のスタッフが千葉店を引き継ぎ再興したのがサンアイカメラで、千葉を代表する中古カメラ専門店と長く親しまれてきたが、入居するショッピングセンターの改装により13年に撤退を余儀なくされた。
 
カメラのリンクショップオーナーの牧佳照さんはハナシマ商会でカメラ人生をスタート。サンアイカメラ時代を経て、長年培った経験を無駄にしまいと、京成千葉中央駅から歩いて10分ほどの所にカメラのリンクショップをオープンさせた。それまでのサンアイカメラに比べると不便だが、いつ行っても常連のお客さんが談笑しているというアットホームな雰囲気。人とカメラあるいは人と人を繋ぐ「リンク」から名付けられた店名通り、カメラ好きが集まるお店だった。また、カメラ本体やレンズだけでなく旧いアクセサリー類の在庫も豊富。最近「変態枠」に括られることが多くなった私にとって、ネタ集めの拠点として欠かせない存在だった。
 
だが数年前に再開発の計画が浮上。これを機に、牧さんの自宅がある山武市に移転することに----。
 
3月6日、自宅駐車場の一角にオープンオープンした新店舗はコンテナのような四角い外観。移転前に比べると狭くなったが、3面の壁にオープン形式の棚がしつらえてあるので、ひと目で全体が見渡せるうえ商品を自由に手に取って確かめることが可能。ちょっと的外れかも知れないが、千利休が作った「無駄なものをそぎ落とした茶室」に通じる合理性が感じられ、いわば「現代風の茶室」?といった佇まい。また店の外にはベンチとテーブルを備えたコーナーを設置。天気の良い日にカメラ談義に花を咲かせるのも、一興と言えるだろう。
 

 

店は首都圏中央連絡自動車道を山武成東ICで降り、県道76号成東酒々井線を酒々井方面へ約10分ほど。住宅地の中にあるが駐車場を完備しているので、ゆっくりカメラ選びができる。近所にはサウナ付の日帰り入浴施設「さんぶ元気館」があるほか、少し足を伸ばせば海水浴が楽しめる。
 
 
 

古くからの常連の風景写真家の小林英一さん。開店の知らせを耳にして仕事のついでに立ち寄ってくれた。交通の便はあまり良くないが、取材中も、次々とお客さんがやって来た。
 
 
 

1975年、ハナシマ時代に実施されたニコンセールのチラシ。掲載された商品が時代を感じさせる。
 
 

ライカなど一部の高額商品はガラスケースに入っているが、それ以外の商品はオープン形式の棚に並べてあるので自由に吟味ができる。
 
 

ニコンFシリーズをはじめとするニコンのフィルムカメラ。上段がMFで下段がAFだ。

 

 

キヤノンのデジタルカメラと交換レンズ。
 
 

ミラーレス機と交換レンズ。
 
 

お約束のジャンクコーナー。開店したばかりなので品数は少なめだが、これから荷物を整理して増える予定。
 
 

ストロボや接写リング、ワインダーなどのアクセサリーも豊富。
 
 
 

サードパーティ製レンズがたくさん並んだ一眼レフ用レンズの棚。
 
 
 

人気の高いフィルム時代のニッコールレンズ。
 
 

ゼンザブロニカ、マミヤ、ペンタックスなど中判用レンズも揃う。
 
 
 

2から6まで揃ったM型ライカ。
 
 

近年の再評価により中古価格急騰中のライカM6。プライスカードには現状特価とあるが、外観はすごくきれい。
 
 

前後対称型の光学系を採用した超広角レンズのスーパーアンギュロン21ミリF4。
 
 

一眼レフのライカR用エルマリート19ミリF2.8超広角レンズ。人気の高い旧型だ。
 
 

シネ用レンズで有名なフランスのアンジェニュー社がライカR用に供給した望遠ズーム。
 
 

ヤシカ時代のコンタックス用交換レンズも充実。
 
 
 

非球面レンズを使うことなく高性能を目指した大口径広角レンズのT*ディスタゴン28ミリF2。
 
 

ニコン最後のレフレックスレンズであるNewニッコールレフレックス500ミリF8。高い描写性能で定評がある。
 
 
 

チノン、カレナー、ケンロック名のM42マウントレンズ。あまり見ないブランドだが、すべて日本製だ。
 
 

645判のゼンザブロニカETR用ズームレンズ。最近は見かけることが少なくなった貴重品だ。
 
 

元箱入りのコンタックスT。コンパクトなボディに二重像合致式本格的な距離計を内蔵。前蓋に連動したレンズ収納システムも大きな魅力だ。
 
 

ちょっと使い込まれた感はあるが、この値段ならお買い得。
 
 
 

AF全盛時代に発売されたペンタックス最後のMF機。絞りリングを持たないデジタル用DFAレンズを組み合わせても、プログラムAEとシャッタースピード優先AEモードが利用できる。

 

 


 記録画素数は少なめだが、価格が手頃でフルサイズ入門に最適な一台。
 
 
 

フルサイズ機で世界最小・最軽量を掲げて2012年に登場。画素数は2020万とフルサイズ機として過不足ないスペックを備えている。
 
 

イメージセンサーとレンズを組み合わせたカメラユニットを液晶モニターを装備した本体に組み合わせて使う異色のカメラ。なかでも24〜85ミリズームを搭載したA16 ユニットは、APSCセンサー&ローパスフィルターレス仕様。時代の最先端をゆくスペックで話題になった。
 
 
 

チェコスロバキア、イギリス、日本と、世界各国で製造された二眼レフ。
 
 

 

ヤシカ635は、120と135フィルムに対応したマルチフォーマット仕様。135フィルム使用の際は、スプロケットを備えた専用アタッチメントをアパチャーセットし、ファインダーに赤線で表示されたフレームで構図を決める。

 

 


 フィルム送りは赤窓式、ピントは目測式とシンプルな仕様のスプリングカメラ。値段も手頃で中判入門にお勧めの一台。
 
 
 

満州事変の影響で蛇腹用皮革が入手困難になったため、ベークライト製の枠を重ねた剛体蛇腹を採用。その形状から、「大阪城カメラ」という愛称があった。
 
 

壁面にディスプレイされた小物類。

 

 


 110円均一のアクセサリーシュー。
 
 

ドイツのベルレバッハが製造した木製三脚で、1990年代に駒村商会が輸入販売した。クラシックな雰囲気が木製暗箱によくに合う逸品だ。19800円。

 

※取材日は、2025年3月14日(金)
 

 

 

  • ◉カメラのリンクショップ
    〒289-1223 千葉県山武市埴谷664-227
    営業時間 10時30分~17時30分
    定休日  火曜日 水曜日
    TEL 090-1107- 6876 FAX 0475-89-2744
    E-mail camera-linkshop@outlook.jp

 

 

Profile

中村文夫

1959年生まれ。ペンタックス宣伝部を経て1996年に写真家として独立。「変態レンズ」コレクターを自負し、レフレックスレンズだけで60本以上。フィッシュアイ、ソフトフォーカスなど、ふつうの人が欲しがらないレンズばかり集める癖がある。

 



 
 
 
 
 

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