僕にとってライカと沖縄の関係は切っても切り離せない。初めてライカM6を買うことになったきっかけが、ファッションブランドのポスター撮影が沖縄ロケに決まった時、35mmで撮って欲しいというアートディレクターのオーダーがあったからだ。その数年後、アメリカの基地内をドキュメントする仕事をもらった時も、その撮影のために当時発売されたばかりのトリエルマーを買った。ちょうど今回このレンズレビューの話をいただいた時も沖縄で中国クライアントの広告の撮影があったからとても縁を感じた。
この日の沖縄は数日続いていた雨もあがって秋の快晴で空気もクリアだ。これまでライカM10-Rにつけていたアポ・ズミクロン50ミリは休憩日にしてもらって、周エルカン50ミリに付け替える。レンズの枚数の少なさが叶える重量の軽さは持った瞬間に自分のライカM6フィルム時代を思い出させた。一枚目を撮った瞬間にバックモニターに現れたイメージを見て、おー!と感動してしまった。クリスプアンドクリアで自分好みだったからだ。色がちゃんとのっていながらも描写が素直。1972年にカナダライツ社が米軍に納品するために作ったKE-7Aに付属されていたこのレンズは全体でも700個前後しかつくられていない希少モノだ(諸説あり)。そう簡単には手にはいらないし、50年後の今では中古の個体差もあるだろう。周レンズプロジェクトの真髄は希少レンズの復刻を通して、まさにこの初めてライカを持った時の感動を再現するという、技術が与える先のビジョンを持っていることが伝わってきた。
とてもこのレンズが気に入ったので、その後もライカM10-Rにつけたまま、新宿、京都など続けて撮影させていただいた。その写り方は大袈裟かもしれないが、Ernst Haasらの50年代カラーフィルム時代の始まりを目撃したような新鮮さを与えてくれた。
使い勝手でいうと、M型の撮影ではほとんどマニュアル露出を使うため、頻繁にシャッターダイヤルや絞りリングを操作するが、この絞りリングにとても小さな突起がつけられているため、カメラを持った右手の指で動かせるのはかなり面白い。絞り値が通常のライカレンズと逆なのはすぐに慣れた。フォーカスもノッチを右手の指で操作すれば片手で撮影が可能になる。このコンパクトレンズを武骨な兵士の手袋をつけた手が触れるように設計していたと思うと設計者の突き詰め方に相当シビれる。
Okinawa_ライカM10-R・絞りF8・1/250秒・ISO200・RAW(DNG)
Okinawa_ライカM10-R・絞りF6.8・1/750秒・ISO200・RAW(DNG)
Shinjuku_ライカM10-R・絞りF4・1/60秒・ISO400・RAW(DNG)
Shinjuku_ライカM10-R・絞りF4・1/60秒・ISO400・RAW(DNG)
Shinjuku_ライカM10-R・絞りF6.8・1/250秒・ISO400・RAW(DNG)
Shinjuku_ライカM10-R・絞りF4・1/30秒・ISO400・RAW(DNG)
Kyoto_ライカM10-R・絞りF4・1/500秒・ISO400・RAW(DNG)
Kyoto_ライカM10-R・絞りF6.8・1/45秒・ISO400・RAW(DNG)
Kyoto_ライカM10-R・絞りF6.8・1/360秒・ISO800・RAW(DNG)
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- 周エルカン LIGHT LENS LAB M 50mm F2(ライカMマウント)
◉対応マウント=ライカM
◉レンズ構成=4群4枚
◉最短撮影距離=約0.7m
◉絞り羽根=10枚
◉フィルター径=Φ39mm(E39規格)
◉大きさ・重さ=約Φ51×30mm・約230g
◉価格=シルバー:127,800円、ブラックペイント:135,900円(ともに税込)
◉取り扱い=株式会社 焦点工房
http://www.stkb.jp ☎052-778-7975
写真家 1971年3月26日静岡県浜松市生まれ。ニューヨーク州ロチェスター工科大学写真学科卒業。雑誌・広告・音楽媒体・映画制作・絵本出版など幅広い分野で活動中。2010年から故郷の浜松市に書店「BOOKS AND PRINTS」のオーナーもつとめる。
【関連リンク】
絶賛発売中の雑誌『写真』vol.3「スペル/SPELL」に、若木さんによる周エルカン LIGHT LENS LAB M 50mm F2レビューを掲載しています。合わせてご覧ください。
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