(前編から続く)被写体認識(検出)AFは、例えば人間や動物が対象の場合、最終的には「瞳」を掴もうとする。いかに遠くから瞳を認識するか… その点を競っているかのようなシビアな動作を見せることもあった。しかし、全身が入るような距離感での瞳認識は、あってもなくてもよいと個人的には考えている。それより、スナップ撮影では人間のフォルム(全身)の認識を最優先にする設定が欲しいところだ。そう思ったときに恋しくなるのは、パナソニックLUMIX「S1」シリーズや「S5」の認識AFだったりするのだが、このご時世、理想の数だけカメラが増えるってのは、さすがにチョイとキツいお話になるわけでして。
シャッター音(電子音)をオフにした状態でのノーファインダー撮影では、撮れている手応えが皆無となる。そのどこか捨て鉢な撮り方も一種、爽快なものではあったが、Z 9は絶対にファインダー撮影にこだわるべきデジタルカメラだ。なぜなら、EVFの表示クオリティがとんでもなく高いのである。これはもはや光学ファインダー(OVF)並みのEVF。Z 9を買う気が皆無でも、Z 9のEVFは一度ちゃんと見ておいた方がいい。EVFに対する印象が一変すること確実である。
「写るモノ」がまるまるそのまま事前に確認できるという意味では、Z 9のEVFは高級一眼レフの光学ファインダーをも超える実力を身につけたといっても過言ではない。眩しい場面を眩しく見せるのみならず、暗いところで大きなマイナス補正をかけたとしても、仕上がりイメージに直結する"暗さ"をちゃんと見せてくれるという「EVFの本来あるべき姿」。それを完璧に近いカタチで身につけようとした心意気こそがZ 9最大の魅力であり、ニコンの本気が垣間見られる部分であるとも思うのだ。
そんなZ 9のファインダーを覗きながら、何の気なしにカメラを曇り空に向けてみたら…。驚いた。大した芸もなさそうな、どんよりしているだけが取り柄だと思っていた曇り空の細かなディテールが、肉眼で見るよりもはるかに豊かな明暗再現で視界に飛び込んでくるではないか。寒空がこんなにも表情豊かだったなんて!
だから、もう一度いっておく。Z 9を買う気はなくても、そのEVFだけは早急に体験してみるべきである、と。そうすれば、あなたもきっと曇り空が好きになるはずだ。
硬い空気の中で刻々と小さく表現を変え続けていた壁面の風景。Z 9の高速連写能力に頼りきりで好みの絵を描いてみた。
NIKKOR Z 24-200mmF4-6.3 VR・マニュアルモード・絞りF11・1/2000秒・ISOオート(ISO3200)・WBオート・ −0.7EV補正
ハイライトとシャドーを巧みに両立させる再現性の高さも魅力のひとつ。ゆえに、記録されているデータが厚く、RAWデータの加工耐性も高い。万能だ。
NIKKOR Z 24-200mmF4-6.3 VR・絞り優先AE(F5.6・1/60秒)・WBオート・ ISOオート(ISO8000)・+1EV補正
斜めに受けているのは、薄日や月明かりではなく水銀灯の光。静寂の中に感じた蠢きを無音のシャッターでそのまま閉じ込める。
NIKKOR Z 24-200mmF4-6.3 VR・絞り優先AE(F6.3・1/30秒)・WBオート・ISOオート(ISO25600)・+0.3EV補正
青ざめるアスファルトに暖かなバランスを与えてくれたのは偶然、差し込んできたヘッドランプの光。カメラ自身の瞬発力がなければ撮り損ねていた瞬間だ。
NIKKOR Z 24-200mmF4-6.3 VR・絞り優先AE(F5.6・1/25秒)・WBオート・ ISOオート(ISO3200)・−1.3EV補正
- [ニコンZ 9 SPECS]
- 型式=レンズ交換式デジタルカメラ
レンズマウント=ニコン Z マウント
撮像素子=有効4571万画素35.9×23.9mmサイズCMOSセンサー、ニコンFXフォーマット(総画素数5237万画素)
手ブレ補正=ボディ:イメージセンサーシフト方式5軸補正、レンズ:レンズシフト方式(VRレンズ使用時)
最大記録画素数=8256×5504ピクセル[FX(36×24)]
画質モード=NEF(RAW):RAW 14ビット、JPEG、NEF(RAW)+JPEG:RAWとJPEGの同時記録可能
記録媒体=CFexpress カード(Type B)、XQDカード、ダブルスロット
ファインダー=1.27cm/0.5型 Quad-VGA OLED、約369万ドット、視野率 約100%、倍率=約0.8倍(50mm時、∞)、アイポイント 接眼レンズ最後尾から23mm
シャッター=電子シャッター、電子シャッター音あり、センサーシールド
シャッタースピード=1/32000~30秒(撮影モードMでは900秒まで延長可能)、Bulb、Time、フラッシュ同調シャッタースピードは1/250秒または1/200秒以下の低速シャッタースピードで同調(1/200~1/250秒はガイドナンバーが減少)
レリーズモード=1コマ撮影、低速連続撮影、高速連続撮影、ハイスピードフレームキャプチャ+撮影、セルフタイマー撮影
連続撮影速度=低速連続撮影:約1~10コマ/秒、高速連続撮影:約10~20コマ/秒、ハイスピードフレームキャプチャ+(C30):約30コマ/秒、ハイスピードフレームキャプチャ+(C120):約120コマ/秒
測光方式=撮像素子によるTTL測光方式
測光モード=マルチパターン測光・中央部重点測光:標準(φ12mm相当)、小さめ(φ8mm相当)、画面全体の平均に変更可、中央部重点度約75%・スポット測光:約φ4mm相当を測光、フォーカスポイントに連動して測光位置可動・ハイライト重点測光
撮影モード=P:プログラムオート(プログラムシフト可能)、S:シャッター優先オート、 A:絞り優先オート、M:マニュアル
露出補正=±5段(1/3、1/2ステップに変更可能)
ISO感度=ISO 64~25600、ISO 64に対し約0.3、0.7、1段(ISO 32相当)の減感、ISO 25600に対し約0.3、0.7、 1段、2段(ISO 102400相当)の増感、感度自動制御が可能
オートフォーカス方式=ハイブリッドAF(位相差AF/コントラストAF)、AF補助光付
検出範囲=ー6.5~19EV(スターライトビュー有効時:ー8.5~19EV)
レンズサーボ=オートフォーカス:シングルAFサーボ(AF-S)またはコンティニュアスAFサーボ(AF-C)、フルタイムAF(AF-F)(動画モードのみ)、予測駆動フォーカスあり・マニュアルフォーカス(M):フォーカスエイド可能
フォーカスポイント=493点 ※静止画モード、撮像範囲FX、シングルポイントAF時
AFエリアモード=ピンポイントAF(静止画モードのみ)、シングルポイントAF、ダイナミックAF(S、M、L、静止画モードのみ)、ワイドエリアAF(S、L)、オートエリアAF、3D-トラッキング(静止画モードのみ)、ターゲット追尾(動画モードのみ)
調光方式=TTL調光制御:i-TTL-BL調光(マルチパターン測光、中央部重点測光またはハイライト重点測光)、スタンダードi-TTL調光(スポット測光)可能
フラッシュモード=先幕シンクロ、スローシンクロ、後幕シンクロ、赤目軽減、赤目軽減スローシンクロ、発光禁止
ホワイトバランス=オート(3種)、自然光オート、晴天、曇天、晴天日陰、電球、蛍光灯(3種)、フラッシュ、色温度設定(2500K~10000K)、プリセットマニュアル(6件登録可)、すべて微調整可能
記録画素数/フレームレート=7680×4320(8K UHD):30p/25p/24p・3840×2160(4K UHD):120p/100p/60p/50p/30p/25p/24pほか、最長記録時間125分、ファイル形式MOV、MP4、映像圧縮方式Apple ProRes 422 HQ(10bit)、H.265/HEVC(8bit/10bit)、H.264/AVC(8bit)、音声記録方式=リニアPCM(動画記録ファイル形式がMOVの場合)、AAC(動画記録ファイル形式がMP4の場合)
モニター=チルト式8cm/3.2型(タッチパネル)、約210万ドット、視野角170°、視野率約100%、縦横チルト可能
有線LAN=RJ-45コネクター、準拠規格:IEEE802.3ab(1000BASE-T)/IEEE802.3u(100BASE-TX)/IEEE802.3(10BASE-T)
画像編集=RAW現像(表示画像)、RAW現像(複数画像)、トリミング、リサイズ(表示画像)、リサイズ(複数画像)、D-ライティング、傾き補正、ゆがみ補正、アオリ効果、モノトーン、加算合成、比較明合成、比較暗合成
Wi-Fi(無線LAN)=IEEE802.11b/g/n/a/ac・周波数範囲(中心周波数):2412~2472MHz(13ch)、5180~5700MHz
Bluetooth通信方式=Bluetooth標準規格 Ver.5.0、Bluetooth Low Energy:2402~2480MHz
電源=Li-ionリチャージャブルバッテリーEN-EL18d※ 1個使用、AC ※EN-EL18c/EN-EL18b/EN-EL18a/EN-EL18も使用可能。ただし、EN-EL18d使用時よりも撮影可能コマ数が減少。
電池寿命=静止画モード(1コマ撮影):モニターモード[ファインダーのみ]時:パワーセーブがONの場合:約740コマ、OFFの場合:約700コマ・モニターモード[モニターのみ]時:パワーセーブがONの場合:約770コマ、OFFの場合:約740コマ・静止画モード(連続撮影):約5310コマ(当社試験条件準拠、モニターモード[ファインダーのみ]時)
大きさ・重さ=約149×149.5×90.5mm・約1340g(バッテリー、メモリーカードを含む)、約1160g(本体のみ)- 発売=2021年12月24日
- 価格=オープンプライス(実売698,500円前後)
- [NIKKOR Z 24-200mm f/4-6.3 VR SPECS]
- レンズ構成=15群19枚
手ブレ補正=ボイスコイルモーター(VCM)によるレンズシフト方式
手ブレ補正効果=5.0段※CIPA規格準拠
最短撮影距離=0.5m(焦点距離24mm)、0.54m(焦点距離35mm)、0.55m(焦点距離50mm)、0.58m(焦点距離70mm)、0.65m(焦点距離105mm)、0.68m(焦点距離135mm)、0.7m(焦点距離200mm)
絞り羽根枚数=7枚(円形絞り)
フィルター径=67mm
大きさ・重さ=最大径76.5×長さ114mm・約570g
発売=2020年7月
価格=139,480円(税込)
[関連リンク]
https://www.nikon.co.jp/news/2021/1028_z9_01.htm
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