東京麹町の東條會館写真研究所で井上佐由紀「はじまりと終わりに見る色を、私は知らない」が開催される。
井上佐由紀は、「おそれ(恐れ/畏れ/怖れ)」をテーマに、それを見たい・知りたいという思いから繰り返し撮影してきた。今回の新作では、生と死の世界への「おそれ」から、赤という「色」に焦点を当て、作品を展開している。
しかし、色というものは不確かで、隣にいる人でも同じものを見ていると言えず、かつて地域性・文化性が強く反映されていた色も、現代ではSNSから大量に降り注ぐスクリーン越しの光のなかで、その意味さえも曖昧にしながら消費されている。見ることの原点である光でさえも永遠ではなく、反復を繰り返し減衰し、消滅していく。
■アーティストステートメント
はじまりと終わりに見る色を、私は知らない
幼い頃、人気のない田畑や墓地で見かけることが多かったせいだろうか、彼岸花が咲く場所がとても寂しく、怖くて仕方がなかった。
成長するにつれて、その根には毒があること、お彼岸の頃に咲くから彼岸花と名付けられたことを知り、私の中では不吉なことを連想する花になっていった。
いつ誰から聞いたのか覚えていないが、人が生まれて初めて認識出来る色が赤で、亡くなる直前に認識出来る色も赤だと聞いた時、思い浮べたのが彼岸花だった。そして、怖いと思っているその花を撮影しようと思った。
合わせ鏡や万華鏡を前にすると、自分がどこにいるかがわからないという感覚がある。永遠に続くリピートの中にいると、自分は長い時間の中の一瞬しか生きられないという事実がまざまざと迫ってくる。
生まれた時に見たかもしれない赤い色を私は覚えていない。いつかくる最期に、私は赤い色を見るだろうか。
フィルム写真全盛期の昭和時代の様子を色濃く残す写真ラボ施設に現れる、井上佐由紀の「おそれ」の世界。作品を通してその感覚に没入しながら、「見ること」「色を感じること」に向き合えるのではないだろうか。
- ■展覧会情報
井上佐由紀「はじまりと終わりに見る色を、私は知らない」
会期:2025年10月31日(金)~12月21日(日)
時間:13:00〜19:00
休廊日:月曜日〜木曜日
会場:東條會館写真研究所
住所:東京都千代田区麹町1-6-12
■アーティストイベント
トークイベント:赤の色についてを紐解く
暗室体験:色の表現を体験するワークショップ
色と色の仕組みを考えて遊ぶ 子供向けワークショップ
色を通じて赤い色を楽しむフードイベント
■プロフィール
井上佐由紀(いのうえ・さゆき)
1974年 福岡県柳川市出身。東京都在住。
九州産業大学芸術学部写真学科卒業。
【関連リンク】
https://photo-lab.tojo.co.jp
| 出展者 | 井上佐由紀 |
|---|---|
| 会期 | 2025年10月31日(金)~12月21日(日) |
| 会場名 | 東條會舘写真研究所 |
※会期は変更や開催中止になる場合があります。各ギャラリーのWEBサイト等で最新の状況をご確認のうえ、お出かけください。


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