© Ishiuchi Miyako [U3 L# #108] donor:Terao, H. Courtesy of The Third Gallery Aya
長野県の信毎メディアガーデン1Fホールで石内都「ひろしま in 松本」が開催される。
「ひろしま」2025 石内 都
今年は原爆が投下されて、戦後80年の時間が過ぎる。被団協がノーベル平和賞を受け、新聞テレビ等でにわかに広島(長崎)が話題になったが、それもつかの間。日本人の多くは、毎年8月6日の記念式典の報道に少し意識するだけだ。それは私がそうだったからである。私も典型的な日本人の1人だった。歴史的な事実は、教科書の知識しかなく、リアルな感覚を持つことはできない。では、その事実の当事者だけしか感じることができない、発言もできないとしたら、当事者がいなくなったら歴史は終わってしまうのか。そんな事は無い。非当事者、よそものが、当事者とは違う別の意味、別の距離感、別の視点を持つ事はできるのだと思うようになった。
「ひろしま」の撮影は18年に及ぶ。写真集の出版と広島での個展から始まり、毎年新しく原爆の遺品が資料館に寄贈される事実を知りかなり驚いたのがきっかけとなり、個人の仕事として毎年広島で撮影をしてきた。しかしこのところ、入院手術が重なり3年ぶりの広島である。
年々寄贈される遺品は少なくなり、所有者もさま変わりする中で、いずれ寄贈品は無くなる。それでも私が撮りたい遺品達は確実に存在し、私が来るのを待っていたかのように、80年の時間をしっかり纏い、歴史の塊のような原爆遺品を目の前にする。
室温、湿度を管理された収蔵庫の暗がりから、自然光のもとに連れ出して、硬くなってしまったシワを伸ばし、原爆を受ける前の様子を想像して、シャッターを押す。外界のを受けて、一瞬自由になった遺品は、カメラに収められフィルム現像され、電光でプリントされ新しい姿で写真の中に
甦る。
1945年から2025年の80年間は戦後の第一次ベビーブーマーの私とあまり変わらない歳月だ。
横須賀から始まった私の写真は、戦後史と個人史が並行して、自然の流れのように広島へ向かった気がする。そして長野県での2回目の「ひろしま」展である事は、地域文化の度合の高さを感じる。
戦後80年を考える企画となる。また初日である8月6日には長野県立美術館館長である笠原美智子とのギャラリートークも予定している。
- ■展覧会情報
石内 都「ひろしま in 松本」
会期:2025年8月6日(水)~8月17日(日)
時間:10:00〜17:00
休廊日:会期中無休
会場:信毎メディアガーデン1Fホール
住所:長野県松本市中央2-20-2
入場料:500円(高校生以下は無料)
■ギャラリートーク
笠原美智子(長野県立美術館館長)×石内都
日時:2025年8月6日(水)15:00〜16:30
会場:信毎メディアガーデン3Fスタジオ
参加費:500円(図録付)
申込先:0263-32-1150
https://shinmai-mediagarden.shop/items/68675435be5fcd645831017d
■プロフィール
石内 都(いしうち・みやこ)
1947年 群馬県桐生市に生まれる
1953年 神奈川県横須賀市へ転居
1966年 多摩美術大学デザイン科入学。大学2年から染織専攻
2007年 広島平和記念資料館で〈ひろしま〉撮影開始
【関連リンク】
https://www.shinmai-mediagarden.jp/event/6670.html
出展者 | 石内 都 |
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会期 | 2025年8月6日(水)~8月17日(日) |
会場名 | 信毎メディアガーデン |
※会期は変更や開催中止になる場合があります。各ギャラリーのWEBサイト等で最新の状況をご確認のうえ、お出かけください。
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