柴田敏雄『1987』がDeadbeat Clubより刊行された。
1989年名古屋万博を前に、写真家・柴田敏雄はツァイト・フォト・サロンの創設者であり先駆的ギャラリストである石原悦郎の依頼で、エジプトとトルコを旅した。本書に収められた写真はその依頼によって制作されたもので、柴田が1987年にトルコ・カッパドキア地方を再訪した際と、ナイル川左岸の運河に沿ってカイロからルクソールまでおよそ400マイルにわたって延びるエジプトのアスワン西部農業道路を旅した際に撮影されたものである。
これらの写真群は柴田が初めて写真集を出版する5年ほど前のもので、ポートレートを探求した珍しい作品も見られる。未知の土地と風景に直面しながらも、すでに柴田らしいスタイルの兆しが表れており、自然と人工の要素が織り交ぜられた構図、そして光の巧みな扱いが際立っている。
柴田敏雄の作品は、ニューヨーク近代美術館、メトロポリタン美術館、ロサンゼルス郡立美術館、J・ポール・ゲティ美術館、サンフランシスコ近代美術館、テート・モダン、ヨーロッパ写真美術館(パリ)、東京都写真美術館、東京国立近代美術館など世界中の美術館に収蔵されている。
■プロフィール
柴田敏雄(しばた・としお)
1949年、東京都⽣まれ。東京藝術⼤学⼤学院美術研究科絵画専攻で版画や絵画制作を⾏う。修了後、ベルギー⽂部省から奨学⾦を受け、ゲント市王⽴アカデミーに⼊学し、新設された写真学科へ進学。ここで本格的に写真を始め、⼤判カメラによるモノクロ写真の制作に取り組み始める。79年に帰国後、ツァイト・フォト・サロンで継続的に個展を開催。細部まで緻密に描写され、緊張感がありながらも優美さを備えた唯⼀無⼆の⾵景写真として注⽬を集める。代表的なシリーズである「⽇本典型」は、柴⽥⾃⾝が「⽇本の国⼟の4分の3以上が⼭岳地帯であるため、⽣産的な⼟地利⽤には常に⾃然との闘いが伴う」と述べる通り、⼭を切り拓き河川を治⽔する⾃然と⼈とのせめぎ合いの場⾯を捉えたものだが、作品に表れるその「闘い」の痕は造形的に美しく、畏怖さえ漂わせている。その美しさは魅⼒的でありながらも、⼈が制御しきれないものの⼒を感じさせる。92年に⽊村伊兵衛写真賞を受賞。2000年代からはカラー写真も発表し始める。⽇本の現代写真を代表する写真家の⼀⼈として国際的にも活躍し、国内外で多数の展覧会を開催。その作品は世界中の美術館に収蔵されている。
- 柴田敏雄『1987』
- 発行年:2025年
発行:Deadbeat Club- 仕様:170×220mm、ソフトカバー、40ページ
言語:英語
価格:本体3,900円(税込4,290円)
【関連リンク】
https://deadbeatclubpress.com/ja-jp/products/1987-toshio-shibata
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