大橋史明『春風にのって、汽車は湿原をゆく』が刊行された。本書は2025年5月にキヤノンギャラリーで開催された展示にあわせて制作された。
展示の際に寄せられた作者の言葉を引用する。
写真展のテーマは、北海道の釧路湿原を走る列車「JR釧網本線」です。美しい湿原の風景が車窓に広がる観光路線として有名な一方で、他の北海道ローカル線と同じように沿線の人口減少などによって厳しい運営状況を強いられている路線でもあります。地図を見ても人家はまばらで、ただひたすらに原野の中を線路が伸びているのみ…。鉄道が走り続けるにはあまりにも過酷なこの大地で、列車がそれでも運ぶもの、繋ぐものとは…?
2023年の5月、そんな釧網本線の今を撮影したいと思い、9日間のスケジュールで現地を旅してきました。目標は、雄大な釧路湿原の中をゆく列車の姿を捉えること、そして列車のまわりに息づく人々のポートレートを撮らせてもらうこと。個人としてのメッセージを作品に込めるのではなく、列車とそのまわりに広がる光景から自ずと立ち上がってくる物語を記録に残したくてカメラを構えてきました。
この作品でご覧頂くのは、「北海道赤字ローカル線の今」です。ですが、赤字経営の窮状を訴えるものではありません。折しも、撮影に赴いた5月は新芽が湿原に顔を出すとってもエネルギッシュな時期でした。雄大な自然の中を列車が走り、そのまわりで生活する人々がいる。そこから生まれてくるありのままの美しさを皆さまと共有したいと思っています。
■プロフィール
大橋史明 (おおはし・ふみあき)
1996年滋賀県生まれ。2018年東京工芸大学写真学科卒業。在学中の制作テーマに箱根登山鉄道を選び、以来撮影を続けている。同鉄道の広告ポスター、グッズ等の撮影を多数手がけ、2021年より箱根の情報サイト「箱根ナビ」のInstagram撮影を担当。2022年にはキヤノンギャラリー銀座/大阪にて個展「森とともに生きていく -箱根登山鉄道の世界-」を開催。現在、箱根登山鉄道の車内にて個展「ハレのひ」を開催中。
大橋史明『春風にのって、汽車は湿原をゆく』
発行:2025年5月20日
サイズ:A4、カラー
【関連リンク】
https://personal.canon.jp/event/photographyexhibition/gallery/ohashi-train
PCT Membersは、Photo & Culture, Tokyoのウェブ会員制度です。
ご登録いただくと、最新の記事更新情報・ニュースをメールマガジンでお届け、また会員限定の読者プレゼントなども実施します。
今後はさらにサービスの拡充をはかり、より魅力的でお得な内容をご提供していく予定です。