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top 本と展示写真集紹介公文健太郎『バラの咲く家』

公文健太郎『バラの咲く家』

2025/07/20
髙橋義隆

公文健太郎『バラの咲く家』が平凡社より刊行された。
 
みんなに愛された「トトロの住む家」、阿佐谷にあった文化住宅・旧近藤邸。緑と共存した美しい邸宅の在りし日の姿を、若き日の写真家が活写した幻の作品集である。

 

大好きだった家と庭、英さんとの思い出はここに永遠に残る―。大正末期に建てられた阿佐ケ谷の文化住宅、旧近藤邸。多くの人に愛された美しい家、その在りし日の姿をあますところなく伝えている。

1924年、杉並区に近藤謙三郎氏が自邸として設計。前年に起きた関東大震災をきっかけに設計、建設された経緯がある。その後、近藤英(えい)氏が引き継ぐ。英氏は桑沢デザイン研究所で教員をしていた。その後、映画監督の宮崎駿氏が著書『トトロの住む家』で紹介し、その存在が知られるようになる。だが2009年、火災によって焼失。現在建物はない。
 
本書の撮影は2007年に行われた。本作の装幀を担っているデザイナーの伊勢功治氏が著者を誘い、撮影することになった。その後2017年に私家版として制作されたが、今回新たな装いで出版されることになった。
 
この家の外観、内装、庭を見ていくと、家とはただの建物でなく、そこに住む人の息遣いがそこかしこにあるのだなと思わせる。直接の関係はないが、本書のサブテキストとして多木浩二の『生きられた家』は適しているかもしれない。
 
なによりこの家を見つめる公文健太郎のまなざしの誠実さが伝わってくる。そして端正に仕上げた伊勢功治の装幀によって、より完成度の高い作品集になっている。ふたりのあとがきも必読。
 
■プロフィール
公文健太郎(くもん・けんたろう)
写真家。1981年生まれ。ルポルタージュ、ポートレートを中心に雑誌、書籍、広告で幅広く活動。同時に「人と自然の接点」をテーマに主に第一次産業の現場を取材。2012年『ゴマの洋品店』で日本写真協会賞新人賞受賞。2024年日本写真協会賞作家賞受賞。

 

  • 公文 健太郎『バラの咲く家』
  • 発行月:2025年2月
  • 発行:平凡社
  • 文:近藤 英
    装幀:伊勢功治
    プリンティングディレクション:髙柳昇
    印刷:東京印書館
    使用::A4変判、80ページ
    価格:本体4,800円+税

 

【関連リンク】
https://www.heibonsha.co.jp/book/b657004.html

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