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top 本と展示写真集紹介鷹野隆大『カスババ ―この日常を生きのびるために―』

鷹野隆大『カスババ ―この日常を生きのびるために―』

2025/06/24
髙橋義隆

鷹野隆大『カスババ ―この日常を生きのびるために―』が刊行された。本書は2025年2月27日から6月8日まで東京都写真美術館で開催された同名展示の図録である。
 
鷹野隆大(1963〜)は写真集『IN MY ROOM』(2005)で第31回木村伊兵衛写真賞を受賞し、現在も国内外で活躍を続ける写真家、アーティストだ。鷹野は『IN MY ROOM』に代表されるセクシュアリティをテーマとした作品と並行し、〈毎日写真〉や〈カスババ〉といった日常のスナップショットを手がけ、さらに東日本大震災以降、「影」を被写体とした写真の根源に迫るテーマにも取り組んでいる。本展のタイトルである〈カスババ〉とは鷹野による造語で、カスのような場所(バ)の複数形だ。
 
大規模な自然災害や感染症の世界的流行、経済発展による環境破壊や都市開発など、私たちは急速な時代の変化の渦中を生きている。鷹野は美しいものだけではない現実を受け入れ、弱いものもみにくいものもそのまま、むき出しのイメージを見る者へ提示する。身近でありながら目を凝らして見ることのない、自身が生きる日常の豊かさと混乱を、鷹野の作品を通しあらためて目にすることになる。鷹野の軌跡を概観する本作が、出口が見えなくなりつつあるこの日常を生きのびるヒントとなるかもしれない。
 
■プロフィール
鷹野隆大(たかの・りゅうだい)
1963 年福井県生まれ。セクシュアリティをテーマに1994年より作家活動を開始。2006年、写真集『IN MY ROOM』で第31回木村伊兵衛写真賞を受賞。毎日欠かさず撮ることを自らに課したプロジェクト〈毎日写真〉を 1998 年に開始し、その中から日本特有の無秩序な都市空間の写真を集めた『カスババ』を2011年に発表。その後、東日本大震災を機に影をテーマに様々な作品制作に取り組んでいる。2021年、個展「鷹野隆大 毎日写真 1999-2021」(国立国際美術館、大阪)を開催。2022年、第72回芸術選奨文部科学大臣賞受賞(美術部門)、第38回写真の町東川賞国内作家賞受賞。

 

鷹野隆大『カスババ ―この日常を生きのびるために―』
出版:水声社
発行年月:2025年3月30日
執筆:鷹野隆大、沢山遼、高嶋滋、伊藤亜紗、遠藤みゆき
編集:遠藤みゆき(東京都写真美術館)、山崎香穂(東京都写真美術館)、飛田陽子(水声社)、関根慶(水声社)、吉山小百合(水声社)
デザイン:北川一成(GRAPH)、吉本雅俊(GRAPH)、八戸藍(GRAPH)
ページ数:360ページ
サイズ:210mm×150mm

 

【関連リンク】
https://topmuseum.jp/contents/exhibition/index-4826.html

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