篠田優/林朋奈『循環2』が刊行された。
前作『循環』と同様のフォーマットを踏襲しているが、前回がカラーであったことに対し、今回は両者ともにモノクロ写真である。本書に掲載された林のテクスト沿って書くと「大昔に撮った」ものとあるが日常の中で撮ったスナップのようだ。対して篠田は2015年から撮影している三浦半島や房総半島の中心に軍事施設の遺構や波打ち際の風景である。ふたりの写真はモノクロである以外は被写体やアプローチ方法は異なる。だが、奇妙な親和性があるから不思議だ。
篠田は本書の寄せたテクストにヴァルター・ベンヤミンについて触れて、〈写真のイメージ、特にその細部には、未来を先取り的に示すチカラがあることをほのめかしていた。〉と書いている。未来は過去によって作られるが、写真はその両方の時間軸が内在している。ふたりの写真は過去と未来の間を循環する亡霊のようにも見えてくる。
■プロフィール
篠田 優(しのだ・ゆう)
1986 年長野県生まれ、現在東京都在住。
2010 年上智大学 経済学部 経営学科 を卒業後、2013 年東京工芸大学芸術学部 写真学科を卒業。
2021 年明治大学大学院理工学研究科建築・都市学専攻総合芸術系 修了。
主な受賞歴に、2012 年 EINSTEIN PHOTO COMPETITION X2 岩渕貞哉賞、2013 年塩竈フォトフェスティバル写真賞大賞。
林 朋奈(はやし・ともな)
1986年三重県生まれ。東京ビジュアルアーツ専門学校中退。
2013年サードディストリクトギャラリーの運営メンバーに参加。
近年の個展に「フラグメントライト」(サードディストリクトギャラリー・2023)「JOY!」(Alt_Medium・2023)。
清里フォトミュージアム作品収蔵。
- 『循環2』
掲載作品:篠田優「イン・マイ・タイム」、林朋奈「爪と水」- 発行年:2025年
アートディレクション&デザイン:山田洋一
仕様:210×125mm、ソフトカバー、64ページ
言語:日本語、英語- 翻訳:高島友希乃
印刷:株式会社研文社
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