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top 本と展示写真集紹介深瀬昌久『遊戯』

深瀬昌久『遊戯』

2025/06/02
髙橋義隆

深瀬昌久『遊戯』が赤々舎より刊行された。
 
深瀬昌久の初となる写真集『遊戯』(中央公論社 映像の現代4)は、1971年に刊行された。深瀬が十数年にわたり撮影した写真群を、『カメラ毎日』編集者の山岸章二によりオムニバス形式でまとめられたこの一冊は、深瀬の原点にして、その後の作品を方向づけるイメージに満ちている。
 
『遊戯』は、写真と人生との鮮烈な対応を表すように6章で構成された。
鰐部洋子を家畜をほふる屠場に伴い、解体される家畜の姿と黒いマントでポーズをとる洋子を撮影した「屠」、その後結婚した洋子との結婚式や新婚生活を私小説風に写し出す「寿」、家出をした深瀬が新宿のアンダーグラウンドシーンで共同生活を送った日々に撮った「戯」、昔の恋人である川上幸代の妊娠時の姿も収めた、最も初期の作品である「冥」、洋子とその母を撮影した「母」そして「譜」。
自身と自身の身内にレンズを向け、生と死の対照とつながりを赤裸々に写し、生きることの遊戯に満ちた有りようを写真表現を通して表した、圧巻の写真集となっている。
 
今回の『遊戯』復刊に際し、原版に掲載する全ての写真と文章を収載しました。その上で、デザインによる再構築を目指し、写真と周囲の空間との関わりや、タイトルの多重露光的造形など、時代を超えた深瀬への応答とも言えるものだ。
 
「Homo Ludens」の営みを幾重にも投げかける写真集『遊戯』は、深瀬作品への、そして私たち自身への視座として、あらためて重要な一冊となるだろう。
 
この名作にこれ以上言葉を重ねるのは野暮であろう。
 
■プロフィール
深瀬昌久(ふかせ・まさひさ)
1934年、北海道中川郡美深町に生まれる。日本大学芸術学部写真学科卒業。日本デザインセンターや河出書房新社などの勤務を経て、1968年に独立。1974年、アメリカ・MoMAで開催された歴史的な日本写真の展覧会「New Japanese Photography」への出展を皮切りに、これまで世界各国の展覧会に出展多数。1992年、不慮の事故で脳障害を負い、20年間の闘病の末、2012年没。享年78。代表作「鴉」は日本写真の金字塔として世界的に高い評価を得ている。没後に創設された深瀬昌久アーカイブスの働きにより、2017年には仏・アルル国際写真祭にて没後初の大回顧展「l'incurable égoïste」を開催。2018年、京都のKYOTOGRAPHIE にて国内初の回顧展「遊戯」を開催。また同年、蘭・Foamにて美術館初となる回顧展「Private Scenes」を開催。その開催に合わせて、深瀬がその生涯をかけて制作した作品群を編さんした写真集「Masahisa Fukase」(赤々舎より日本語版、Editions Xavier Barralより英語版及び仏語版)が刊行された。以降も「Kill the Pig」(Ibasho & the (M) éditions 2021)「サスケ」(Editions Xavier Barral、赤々舎 2021)「家族」(Mack 2019)など、多数の作品集が刊行されている。

 

深瀬昌久『遊戯』
発行:赤々舎
サイズ:H280mm × W225mm
ページ:128ページ
言語:日本語、英語
価格:本体6,500円+税

 

【関連リンク】
http://www.akaaka.com/publishing/masahisafukase-HomoLudens.html

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