top 本と展示写真集紹介亀岡倫太郎『奥羽』第1-5号

亀岡倫太郎『奥羽』第1-5号

2025/05/25
髙橋義隆

亀岡倫太郎『奥羽』第1-5号が刊行された。本書は2025年3月に東京新宿のphotographers’ galleryで展示された「奥羽 1」にあわせて制作された。
 
亀岡は2024年より、自身の出身地である東北地方の撮影を精力的に行ってきた。「奥羽」シリーズは亀岡自身の故郷を含む東北地方が歩んできた歴史を考察しながら、撮影を続けていく試みとなる。
 
奥羽とは、陸奥と出羽を合わせた名称であり、東北地方の旧称として用いられてきました。「東北」という言葉は、明治維新以降、「奥羽」にかわる言葉として自由民権運動にかかわった奥羽出身の活動家たちによって意識的に使われてきた。亀岡の撮影はこの地名の書き換えによって見えにくくなってしまったものがあるのではないかという問題意識から始まった。
 
亀岡にとって「東北/奥羽」の撮影は、個人的な体験や自身の記憶を通して、近代によって上塗りされたヒダをめくり上げていく行為といえるだろう。撮影された写真には、歴史を象徴する被写体が含まれつつ、それだけにはとどまらない街の風景や海・山の自然など、様々な要素が正面から捉えられている。そこには所与の現実を受け止め、記録しようする亀岡の姿勢が伺える。
 
東北関連でいえば写真家・内藤正敏による即心仏を扱った『ミイラ信仰の研究』(大和書房)があるが、これは東北の裏面史ともいる内容である。またより東北を深く知るためのテクストとして赤坂憲雄の『東北学/忘れられた東北』『東北学/もうひとつの東北』(いずれも講談社学術文庫)、高橋崇『蝦夷 古代東北人の歴史』『蝦夷の末裔 前九年・後三年の役の実像』『奥州藤原三代』(いずれも中公新書)などが個人的には最良だと思う。東北の歴史は研究文献も多く、それだけ深く掘り下げるだけの何かがあるのだろう。

 

これらの書籍を参考に読みつつ『奥羽』を見ると、風景の背後にあるものがより深く見えてくるかもしれない。

 

  • 亀岡倫太郎『奥羽』1-5
  • 発行/発売:photographers’ gallery
  • 仕様:210×210mm、中綴じ、カラー、各冊8頁
    各冊 300円(税込)

 

【関連リンク】
https://pg-web.net/exhibition/rintaro-kameoka-ouu/

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