top 本と展示展覧会ピックアップ京都のRPS京都分室パプロルで千賀健史・林田真季「AFTER ALL」が開催

京都のRPS京都分室パプロルで千賀健史・林田真季「AFTER ALL」が開催

2025/03/29

京都のRPS京都分室パプロルで千賀健史・林田真季「AFTER ALL」が開催される。

本展は、KG＋ PICK UP に選出された公式プログラムとして開催され、シンガポール国際写真祭ダミーブックアワード受賞作家である両名が、それぞれの写真集刊行を記念し、新たに構築した展示コンセプトのもとで作品を発表する。

千賀と林田は、それぞれ異なるアプローチから社会の見えにくい構造に迫る作品を制作してきた。本展では、日本における産業廃棄物の不法投棄と特殊詐欺という、一見無関係に思える二つの社会問題がどのように交差し、変遷してきたのかを浮かび上がらせる。さらに、既存の写真表現の枠を超え、社会の深層にある構造や、私たちの日常と無意識の関与について問いかける。

また、本展では、昨年 IANN Books から刊行された千賀の「HIJACK GENI」と、リマインダーズ・フォトグラフィー・ストロングホールドが「出版を実現させる」という動機から立ち上げた「ONE AND ONLY EDITIONS」の記念すべき第一弾となる林田の「BEYOND THE MOUNTAINS」を展示とともに紹介する。

■キュレーターズ・ステートメント
「After all」は、千賀健史と林田真季、二人のアーティストがそれぞれ異なる視点から社会にアプローチしながらも、結果として同じ構造的な問題へと辿り着いたことを示す試みである。

1990〜2000年代、日本では産業廃棄物の不法投棄が裏社会の収益源として横行していた。当時、産業廃棄物対策に携わった職員が、不法投棄の実態を調査し、関係者と信頼関係を築きながら取り締まりを進めた結果、件数と量は大幅に減少したという。しかし、彼が語った「多くが今は別の手段で利益を上げている」という言葉は、社会のひずみを鋭く浮き彫りにする。

本展では、林田が不法投棄に関するリサーチを通じて環境の変化が社会に与える影響を探り、千賀は特殊詐欺をテーマに、裏社会が収益源を変えながら継続していく構造に焦点を当てる。制度や環境の変化によって既存の収益源を失った裏社会は、新たな手法を編み出しながら、その循環を維持し続けている。この収益構造は、私たちの行動や社会全体の仕組みと無意識のうちに結びつき、知らず知らずのうちに裏社会を支えている。 社会のほころびを映す作品群は、私たち自身の無自覚な関与を問いかける。

また、千賀と林田はともにシンガポール国際写真祭ダミーブックアワードを受賞した作家であり、各々の刊行書籍を起点に、新たな展示構成を生み出した。異なるテーマを並列に配置することで、鑑賞者自身がこの構造にどのように関与しているのかを考える契機となることを目指している。本展が、作品のさらなる解釈や多角的な視点を提示し、社会の構造を読み解くきっかけとなることを期待している。

後藤由美 / Yumi Goto （RPS京都分室パプロル）

■展覧会情報
千賀健史・林田真季「AFTER ALL」
会期：2025年4月12日（土）〜5月11日（日）
時間：13:00〜19:00
休廊日：4月21日〜25日
会場：RPS京都分室パプロル
住所：京都市上京区老松町603

■プロフィール
千賀健史（ちが・けんじ）

1982年滋賀県生まれ。滋賀と東京を拠点に活動。大阪大学卒業後、事実と虚構を織り交ぜた作品制作を行う。近年の展示に「まず、自分でやってみる」（BUG）、「日本の新進作家 vol.21 現在地のまなざし」（東京都写真美術館）など。主な受賞歴に、シンガポール国際写真祭ダミーブックアワード、大理国際写真展最優秀新人写真家賞、写真新世紀優秀賞、1_WALLグランプリなど。

林田真季（はやしだ・まき）

1984年大阪府生まれ。東京を拠点に活動。関西学院大学卒業後、ロンドン芸術大学MA Photography修了。社会の構造を可視化する写真表現を探求する。近年の展示に「第17回 shiseido art egg」（資生堂ギャラリー）、「高井戸芸術祭2024」など。主な受賞歴に、シンガポール国際写真祭ダミーブックアワード、国際女性写真家賞など。

【関連リンク】
https://reminders-project.org/rps/kenjichiga_makihayashida_afteralljp/