榎本八千代『記憶の改竄』が刊行された。
この作品の写真は、4歳の男の子の使い古された靴と服とおもちゃとそしてその子供が住んでいたマンションの周りの風景が写っているだけです。本来ならその使いふるされた者達は成長と共に役目を終えて、廃棄されるべき予定のものでした。
しかし、それらのモノたちは捨てられることはなく、そして誰かに譲られることもなく、ずっと戸棚の奥へ長い間隠されておりました。何故ならそれは、その男の子の母親が、彼が亡くなったという事実をどうしても認められなかったからです。
しかし、それらのモノ達は11年もの間、存在はずっと忘れられていなかったものの一度も外へ出されることはありませんでした。
彼女はその事実に対して、正面から向かいあう勇気がありませんでした。自分の子供の死というのは自分の残りの人生の死でもあるからです。
2016年の春、その子の母親であり、作者でもある榎本は、しまっていた箱から一つ一つ丁寧に取り出し、カメラの前に置き写真を撮り始めました。
それは写真というツールを利用することにより、自らの「喪失」の記憶について向かいあう事ができると考えたからです。
■プロフィール
榎本八千代
1967年 埼玉県生まれ 現在埼玉県上尾市在住
1987年 神田外語学院(英語科)卒業
2017年 京都芸術大学 通信課程 美術科写真コース卒業
2021年 オリィ研究所アルバイト勤務をしながら8000books and so on.を稼働中
2017年 研究室特別賞 京都芸術大学 写真コース
2019年 京都国際写真祭 ポートフォリオレビュー reviewer's pick
2019年 キヤノン株式会社 第2回 SHINES ファイナリスト
榎本八千代『記憶の改竄』
サイズ:210 mm×150mm
発行年:2025年3月1日
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