波多野祐貴「接触と沈殿」©Yuki Hatano
東京新宿のAlt_Mediumで波多野祐貴「接触と沈殿」が開催される。
いつもの振る舞いを制限され、他者にも容易には会えなくなったことで、その頃のわたしは憂鬱な気持ちを抱えていた。ひとりになれる場所がほしくて、静かな場所の古い家屋の中に小さな部屋を借りた。それはひどく寒い季節が始まる頃の話で、次の寒い季節が来るまで続いた。ここに並ぶのはその部屋を訪れてくれた人物、そして同じ時期に出会った風景と事物のポートレイトである。
部屋の訪問者たちとは初対面で、まずは挨拶を交わし、穏やかな雰囲気の中で撮影が始まる。そこには少しばかりの緊張と居心地の悪さも交じっていただろう。撮影のあいだも色々な話をする。まるで短い物語を聞くかのような時間もあった。しかし誰かのことを思い出そうとする時に思い浮かぶのは、耳底に沈む声の響き、瞬きひとつで移ろう表情の行方、あるいは窓から差し込む光が床の表面に残す、体温にも似た温かさだ。それらはあまりに微細な事柄で、曖昧で、日常生活の中で掻き消されてしまう他者の感触を含んでいる。必ずしも写真に記録されるわけではないそれらが、見る人の中で呼び起こされたら良いと思う。
- ■展覧会情報
波多野祐貴「接触と沈殿」
会期:2025年2月28日(金)~3月5日(水)
時間:12:00〜19:00(最終日17:00まで)
休廊日:会期中無休
会場:Alt_Medium
住所:東京都新宿区下落合2-6-3 堀内会館1F
■波多野祐貴×川崎祐 トークイベント「他人を撮ること」
2025年3月1日(土)17:30〜(予約優先)
他人を撮ること。あらためて考えてみると不思議な行為で、そこには撮影者それぞれの「撮ること」があるはず。これまで家族や、他人に纏わる風景を撮影されてきた川崎祐をゲストに招き、一緒に考えるトークイベント。
■プロフィール
波多野 祐貴(はたの・ゆき)
2009年 同志社大学文学部英文学科卒業
2018年 勇崎哲史氏主宰 写真ワークショップ「FRAGMENTS 6」参加
川崎 祐(かわさき・ゆう)
写真家。1985年滋賀県生まれ。早稲田大学第一文学部卒、一橋大学大学院言語社会研究科修士課程修了。主な展覧会に「わたしの知らない場所の名前」「未成の周辺」「光景」「Scenes」。写真集に『未成の周辺』『光景』。その他、文芸誌等に寄稿多数。
【関連リンク】
https://altmedium.jp/post/202502hatanoyuki/
出展者 | 波多野祐貴 |
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会期 | 2025年2月28日(金)~3月5日(水) |
会場名 | Alt_Medium |
※会期は変更や開催中止になる場合があります。各ギャラリーのWEBサイト等で最新の状況をご確認のうえ、お出かけください。
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