鹿野貴司「この雨が地維より湧くとき」©Takashi Shikano
ソニーイメージングギャラリー銀座で第14回公募セレクション作品 鹿野貴司「この雨が地維より湧くとき」が開催される。
南アルプスに抱かれ、広い町域の96%を森林に覆われた山梨県早川町は、日本でもっとも人口の少ない町でもある(2024年10月1日時点で876人)。僕は縁あって10年以上この町に通い、これまでおよそ850人の町民を撮影している。そこで強く感じるのは、老若男女問わず、早川町の人々はみな肌のつやがよいことだ。とくにおじいさんおばあさんは実年齢よりずっと若く見える。その理由だが、僕は水にあると思う。
早川町には主な集落ごとに水源があり、その数は22か所。住民たちが自らの手で維持管理している。蛇口から出てくるのは、南アルプスの“ほぼ”天然水だ。湧水もあちこちの山裾にあり、遠くから汲みにくる人の姿も見かける。それらの水はおよそ20年前、急峻な山々に降った雨。木から土、そして岩をくぐり抜けた清冽な水が、人々の身体へと沁み入っていく。
町内から甲府盆地の高校へ通っていた人が、学校の水道水が口に合わず、自宅から水を持参していたという話を聞いたことがある。甲府盆地は全国屈指の晴天率を誇るが、山ひとつ越えた早川町の年間降水量はその倍近くあり、豪雨や台風による災害も多い。一方でそれは恵みの雨として、動植物たちを育む。獣や魚を獲り、畑を耕し、余れば近所へお裾分け。コンビニもスーパーもないこの町では、自給自足に近い暮らしもとりたてて珍しくはない。それとは対照的にリニア中央新幹線の工事も進むが、時速500kmでリニアが駆け抜けるようになっても、それは変わらないように思う。
山とともに生きることは、雨とともに生きること。今も雨乞いの風習が残る集落では、日照りが続くと太鼓や鍋を叩き、空へと祈りを捧ぐ。そして降る雨は森へと消え、ひとすじの地維となってふたたび湧くときを待つ。
■展覧会情報
第14回公募セレクション作品
鹿野貴司「この雨が地維より湧くとき」
会期:2025年1月10日(金)~1月23日(木)
時間:11:00~19:00
休廊日:会期中無休
会場:ソニーイメージングギャラリー銀座
住所:東京都中央区銀座5-8-1 銀座プレイス6階
■プロフィール
鹿野 貴司(しかの・たかし)
1974年東京都葛飾区生まれ。
多摩美術大学美術学部二部映像コース卒業。
さまざまな職業を経て、広告や雑誌の撮影を手掛ける。
公益社団法人 日本写真家協会会員。
▼写真集・著書
『甦る五重塔 身延山久遠寺』(平凡社)
『感應の霊峰 七面山』(平凡社)
『山梨県早川町 日本一小さな町の写真館』(平凡社)
『いい写真を撮る100の方法』(玄光社)
【関連リンク】
https://www.sony.co.jp/united/imaging/gallery/detail/250110/
出展者 | 鹿野貴司 |
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会期 | 2025年1月10日(金)~1月23日(木) |
会場名 | ソニーイメージングギャラリー銀座 |
※会期は変更や開催中止になる場合があります。各ギャラリーのWEBサイト等で最新の状況をご確認のうえ、お出かけください。
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