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東京目黒のコミュニケーションギャラリーふげん社で矢作隆一個展「奇跡×軌跡」が開催

2024/11/13

矢作隆一個展「奇跡×軌跡」©Ryuichi Yahagi

 

東京目黒のコミュニケーションギャラリーふげん社で矢作隆一個展「奇跡×軌跡」が開催される。
 
矢作隆一は、神奈川県川崎市出身、メキシコ・ベラクルス州ハラパ市在住のアーティスト。1995年に金沢美術工芸大学美術学科彫刻家専攻を卒業し、1995年にメキシコへ移住した。現在は、ベラクルス州立大学美術造形研究所研究員として、彫刻や写真のインスタレーションを通して、メキシコと日本で精力的に発表を行なっている。1987年に辻調理師専門学校を卒業し、調理師として働いていた経歴を持ち、唐辛子をテーマとした作品やワークショップも行なっている。
 
本展では、「奇跡×軌跡」シリーズから写真作品108点と、模石を展示する。
約500年前、スペインに征服後のメキシコで、キリスト教の洗礼を受けた先住民フアン・ディエゴの前に褐色の肌と黒髪を持つメキシコ版の聖母マリアである聖母グアダルーペが出現する奇跡が起きた。それ以降、グアダルーペは、カトリック信仰の厚いメキシコにおける最大の信仰の対象となった。
 
2011年の東日本大震災により発生した、福島第一福島原子力発電所の事故を、地球の反対側から見つめていた矢作は、聖母グアダルーペを自身が住むベラクルス州にある、国唯一の原子力発電所であるラグーナ・ベルデを起点とし、日本全国に点在する原子力発電所に一箇所ずつ訪れ、原子力発電所をバックにグアダルーペを出現させて撮影するようになった。それらと合わせ、福島第一福島原子力発電所に隣接する福島県双葉郡富岡町と浪江町で、震災後に新しく建設された住宅地をモノクロームで撮影した写真と、グアダルーペの奇跡に端を発し、キリスト教と土着の文化が融合して生まれたメキシコの祭りの疾走感のあるスナップとともに展示される。
 
また、彫刻家である矢作が、長年続けているプロジェクトである「模石」も展示される。「模石」とは、ある場所で採取した石を見本にして、同じ組成の石を使って両者の見分けがつかないくらいに模倣し彫刻したものだ。今回は、グアダルーペが出現したテペヤックの丘付近で採取した石を使い、富岡町と浪江町の海岸で拾った石を模刻した模石を展示する。
 
日本とメキシコの二つの国を行き来しながら制作した作品は、グアダルーペ出現という奇跡を軸にして、両者の文化の軌跡と現在、そしてこれからの未来を考えさせるものだ。両国の文化と歴史を撹拌し生み出された作品を通して、相互への理解を深めていただくきっかけとなるだろう。

 

■アーティストステートメント
聖母グアダルーペはカトリック信仰の篤い国であるメキシコにおける最大の信仰の対象であり、メキシコ版の聖母マリアです。聖母グアダルーペは、スペインによる征服の少し後の1531年12月9日に、キリスト教の洗礼を受けた先住民フアン・ディエゴの前に現れたと言われています。この聖母は褐色の肌と黒髪をしており、先住民族の言語であるナワトル語で彼に語りかけました。それから約500年経った現在、聖母グアダルーペ信仰は日常の生活に根付いており、子供にグアダルーペの名前を付ける親もメキシコには多くいるのです。また「死者の日」を始めとしてキリスト教と土着の習慣や風習が融合したお祭りを各地で見ることができます。聖母グアダルーペの出現という奇跡と聖母グアダルーペと共に歩んできた軌跡を感じるのは私だけではないでしょう。
2011年3月11日、日本でマグニチュード9.0の地震が発生し、その津波の影響により福島第一原子力発電所で前例のない事故が発生しました。今年で事故から13年の月日が経ちましたが、未だに自宅に戻れない人も多く、廃炉の道筋も立っていないのが現状のようです。私の住むメキシコのベラクルス州にはラグーナ・ベルデ原子力発電所という、この国唯一の原発があります。幸い大きな事故は起きていませんが、自宅のあるハラパ市からわずか80kmの距離にあるのです。私は東日本大震災後、メキシコのラグーナ・ベルデ原子力発電所を始め、日本に帰国する度に各地の原発を一つずつ周り、約500年前にメキシコの地に出現した時のように、原子力発電所をバックに聖母グアダルーペの写真を撮りはじました。また幾度となく、福島第一原子力発電所に隣接している富岡町や浪江町に足を運び、津波で流されて空き地となっていたところに家が建ち、道が整備されていく様子を見て来ました。奇跡的な復興を遂げているのは事実だと思うのですが、あまり住人の帰還が進んでいないのか、町に生活感がないのです。この先、何十年と続くか分からない廃炉への道と共に、この町はどのように変容していくのか、日本の裏側から聖母グアダルーペの奇跡を信じて見守って行こうと思っています。

 

■展覧会情報
矢作隆一個展「奇跡×軌跡」
会期:2024年11月1日(金)~12月1日(日)
時間:12:00〜19:00(土日は18:00まで)
休廊日:月曜日、祝日
会場:コミュニケーションギャラリーふげん社
住所:東京都目黒区下目黒5-3-12

 

■イベント
ギャラリートーク 矢作隆一×飯沢耕太郎(写真評論家)
日時:2024年11月2日(土)14:00〜15:30

会場:コミュニケーションギャラリーふげん社
参加費:1000円(会場観覧・オンライン配信)

※オンライン配信あり

※トーク終了後にレセプションを開催。
※オンライン配信のアーカイブ視聴は 2024年12月8日(日)まで

※申し込み方法:ふげん社オンラインストア(https://fugensha-shop.stores.jp/)から。店頭支払いを希望者はふげん社まで(03-6264-3665)連絡。

 

■プロフィール
矢作隆一(やはぎ・りゅういち)
1967 神奈川県川崎市生まれ
1987 大阪あべの辻調理師専門学校卒業
1995 金沢美術工芸大学美術学科彫刻専攻卒業
1995 メキシコ渡航(移住)
2001 メキシコ政府アーティストプログラム奨学生
2002-2009 ベラクルス州立大学芸術学美術学科講師
2010 メキシコ国立自治大学芸術学部サンカルロス美術大学院卒業
現在 ベラクルス州立大学美術造形研究所研究員、メキシコ国立自治大学芸術大学博士課程在籍
Sistema Nacional de Creadores de Arte (SNCA)メンバー
主にメキシコと日本にて制作発表を行っている他、両国の文化交流の企画、コーディネートも手がける。美術作家を志す以前に大阪あべの辻調理師専門学校を卒業し調理師として働いていた経歴も持ち、唐辛子をテーマとした作品やワークショップ等も行っている。
 
【関連リンク】
https://fugensha.jp/events/241101yahagi/

展覧会概要

出展者 矢作隆一
会期 2024年11月1日(金)~12月1日(日)
会場名 コミュニケーションギャラリーふげん社

※会期は変更や開催中止になる場合があります。各ギャラリーのWEBサイト等で最新の状況をご確認のうえ、お出かけください。

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