top 本と展示写真集紹介山口聡一郎『DESSIN』

山口聡一郎『DESSIN』

2024/11/14
髙橋義隆

山口聡一郎『DESSIN(デッサン)』がふげん社より刊行された。

 

本作は2023年に奈義町現代美術館、gallery 0369、ふげん社と各所で開催された展示の模様と作品を収録した図録的な内容となっている。
 
山口聡一郎は、1959年佐賀県藤津郡太良町生まれ、岡山県岡山市在住の写真家。1980年法政大学法学部を中退後、1980年東京写真専門学校に入学し、同校の講師でもあった故小森孝之氏が主催する「写塾下高井戸」に参加。1985年にフリーランスとなり、1993年には、夜の新宿の風景を6×7判で捉えた第一写真集『都市回路』(矢立出版)を上梓。その後2002年に岡山県に移住し、12年間の空白期間を経て作品制作を再開した山口は、活動拠点である岡山県東部を中心に、車を運転しながらウィンドウ越しに地方の農村風景を撮影するシリーズを、写真集『FRONT WINDOW』(蒼穹舎、2013)や『Driving Rain』(Folder、2013)等にまとめている。
 
タイトルにもなっている「DESSIN」シリーズは、1200×900mmサイズのダンボールを支持体に、A4サイズに分割した写真を16枚貼り込め、塗装を施し制作する作品シリーズだ。分割されたフレームが窓枠のような視覚効果となり、まるで被写体が窓越しにいるような臨場感があるのが特徴だ。
 
またヌードをモチーフにした作品も収録されている。ヌード撮影を始めたきっかけは、1999年春の深夜、突然思い立った作家が、自らの身体を撮影したことでした。その一連の作品は同年『アサヒカメラ』7月号のヌード特集に掲載された。その後も性別問わず、機会あるごとに撮り続けていたヌードだが、ふげん社の展示で初めて発表した。
 
山口は自身のライフワークであるヌード撮影を、画家モランディが壺や瓶を繰り返し描き続けたことになぞらえる。裸の所有者である個人に特別な興味を抱いているわけではなく、ヌードを撮影することで「まだ見ぬ世界に足を踏み入れようとする」行為であると言う。それは対象をとらえるために試行錯誤しながら描き続ける終わらないデッサンのようだ。
 
また巻末にはふげん社で行われた土田ヒロミ(写真家)との対談が収録されている。

 

■プロフィール
山口聡一郎(やまぐち・そういちろう)
1959年 佐賀県藤津郡太良町 生まれ
1977年 佐賀県立鹿島高等学校卒業
1980年 法政大学中退
1981年 故小森孝之氏主宰「写塾下高井戸」参加
1982年 東京写真専門学校卒業
1985年 東京にてフリーランスフォトグラファー
2002年 岡山県に移住
2014年 岡山市にてギャラリー722を運営
2020年 写真誌「陰と陽」刊行

 

  • 山口聡一郎『DESSIN(デッサン)』
  • 発行:ふげん社
  • 発行日:2024年9月30日
  • 寄稿:遠山健一郎(奈義町現代美術館)、能勢伊勢雄、高木 遊(金沢21世紀美術館)
    対談:土田ヒロミ
    デザイン:武田厚志(SOUVENIR DESIGN INC)
    編集:関根 史
    印刷:渡辺美術株式会社
    仕様:B5サイズ、96ページ

 

【関連リンク】
https://fugensha.jp/events/230907yamaguchi/

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