林田摂子『森にふれる』がDOOR booksより刊行された。
- 林田摂子は縁あって島根県で暮らすようになり、さらに結婚、出産、そして子育てをしながら夫とともにパン屋を切り盛りする日々を送ってきた。その日々にそれはやってきた。偶然に手にしたカメラで慣れ親しんだ近所の杜へ入り、久しぶりに周囲にレンズを向け何枚か撮っていった。ことさら自分が主体となって事を運んだ訳ではない。よく行く本屋で持ちかけられた話に乗ったまでのことであったが、その主体性の希薄な受動的態度が結局、林田摂子の写真になっていく。
- 己を空なしうして物を見る。自己が物の中に没する
俳人の境地を指した言葉ながら、あるとき林田は自分の写真を撮る行為を強いて言い表すならこれだと言った事がある。それも普段からそれを心がけているわけではなく、あえて言葉にするならこれかなあと曖昧な言い方であった。自身の行為を言葉にして他者へ伝える事が難しいとよく言う。だから写真を撮る。自己の不在、身の置き所のない感じを表現で埋め合わせる訳でもなく、そのままの心模様でカメラを向ける。写真を撮る行為者の自己の不在によって、逆に写されたものは見る者へ語る言葉を持つ。林田の写真はそうして静かにこちらに語りかけてくる。現代がとっくに置き忘れた古の俳人の境地は、こうして今も消えずにフワフワと漂い、現代社会を器用に生きられない一人に現れ、その受動が写真集を出すという能動になって現れた時、手にして見るものの眼差しは、どうかするとはるか向こうへ遊ぶようにして空を見つめるのではないかと想像する。
DOORbooks 高橋香苗
- 林田摂子『森にふれる』
発行日:2025年11月21日
発行所:DOOR books- 装丁:瀧尻悟史
- 仕様:A4変型、並製本、64ページ、作品掲載34点
掲載作品:カラー、巻末に大木篤夫の詩を挿入
部数:500部
価格: 本体4,910円(税込5,400円)


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