top 本と展示展覧会ピックアップ東京神田のThe Whiteで河田展子+渡邊聖子「Ritual」が開催

東京神田のThe Whiteで河田展子+渡邊聖子「Ritual」が開催

2024/10/03

東京神田のThe Whiteで河田展子+渡邊聖子「Ritual」が開催される。
 
スプラウト・キュレーションの神保町オルタナティブ・スペースThe Whiteでの企画展示第3弾は、ともに1980年生まれの女性アーティストによる2人展だ。
 
河田展子の立体作品は、日常道ばたや自然の中で何気なく拾った質素な物のアッサンブラージュです。もちろんファウンドオブジェクトで制作すること自体は珍くはない。河田展子の特徴は、収集した素材を、それ以上分節したり、接着しないことにある。それらは「個」であると同時にアクタントであり、寄り添ったり、反発する力を緩和したり、重力や風などの本来の動きも取り入れながら、全体としては絶妙なバランスを形成している。
 
河田はかつて、茶花の投げ入れの華道家から稽古を受けた経験があるという。無為の境地で一期一会の様相を作り出す、非常に緊張感を伴う花の投げ入れ。その影響か河田の作品には佇まいの美しさのみならず、空間や時間に独特の静けさや緩やかな緊張感をもたらしている。あるがままのものは矯正したり加工することなくとも、十分に美しい関係性を形成することができる。そこにはそのような社会的な含意があるのかもしれない。
 
写真家である渡邊聖子は、写真に留まらず詩作や空間と身体を伴ったパフォーマティブな表現活動も行っている。本展で紹介するのは継続的に制作している花のシリーズから。渡邊にとってささやかな聖域であるキッチンの片隅で撮影された花、そして夏至の花シリーズだ。
 
渡邊が主に好んで撮影する花は、ピークを過ぎて枯れていく過程にある切り花だ。とくに一年の中でもっとも生命力が高まる〔であろう〕夏至に撮影する。枯れた花はもう生きてはいないが死んでいるわけではない。夏至という特別な日に、それを逆さまにして撮影することで意味が転倒する。枯れた花にもうひとつの「生」をもたらすことができるのではないか。写真はその揺籃期において「魂を奪われる」として忌み嫌われたこともあった。しかし渡邊は撮影することで逆に再生させられると考えている。生と死を二項対立的にとらえるのではなく、その中間へのしなやかな思考は、彼女のシャーマンライクな側面と理解できる。 花の撮影について渡邊は次のように語る。

 

花が花しているのを撮る、
わたしもやっと花せる!花せた!みたいに、
形ではなく内側から経験しているから意図できないことが起こります。

 

「花」「鼻」は「しょっぱな」にみられるように、古来「先端」というニュアンスから発生したと言われている。そして「話す」「放す」は、いずれも端緒を開くということでもあり、渡邊の言う「花せた」はあながち言葉遊びではないのかもしれない。
 
生命力に満ち溢れた物質性という文脈で捉えるなら、ジェーン・ベネットの『震える物質~物の政治的エコロジー』を参照することも可能だろう。しかしここではよりシンプルに、二人の女性アーティストの制作過程にある儀式性に注目し、共に受動的で不活発な物を生きた存在として再確認する作品を、2つの展示室で展開する。
 

  • ■展覧会情報
    河田展子+渡邊聖子「Ritual」
    会期:2024年10月5日(土)~11月3日(日)
    時間:13:00~19:00(第1・第3日曜は17:00まで)
    休廊日:月曜、火曜、第2日曜、第4日曜
    会場:The White
    住所:東京都千代田区猿楽町2-2-1 202

 

■プロフィール
河田展子(かわだ・のぶこ)
1980年山口県生まれ。2003年 慶應義塾大学卒業後、 ロンドン芸術大学チェルシー・カレッジ・オブ・アート& デザイン卒業。日常の中で、道ばたや自然の中で何気なく手にしたものを、極力手を加えず関係性を組み替えながら、時間と空間を詩的に脱構築する。2022年「seasons」(受注制作プロジェクト)、 2015年 「SUPER OPEN STUDIO」(滞在制作/REV/神奈川)、 2015年「ニューバランス#1、#2」(グループ展/Sprout Curation/東京)、「2013年グループ展「V」(Sprout Curation/東京)など。
 
渡邊聖子(わたなべ・せいこ)
1980年鳥取県生まれ。2002年早稲田大学第二文学部卒業。写真を存在論のように捉えながら、写真を撮り、詩やテキストを書き、それらや石・砂・花・ガラスなどをもちいた制作をしている。それは作られていく写真/作品の価値を問う作業でもあると考えている。2008年と2013年にキヤノン写真新世紀佳作受賞。2013年にA-pressから作品集「石の娘」を出版。近年の発表に、2024年「Time zones」(グループ展/wavesproject/湯河原)、2023年「幽霊の道具」(グループ展/Sprout Curation/東京)2023年「花の妙」(滞在制作/BiteSite/釜山)、2022年「Parfüme・火・自分だけの部屋」(滞在制作/たけのま/横浜)、2022年「Parfüme」(個展/Cy/鎌倉)、2021年「Cancelled Order」(グループ展/Rathenau Hallen/ベルリン)、2019年「Matrix Session」(グループ展/KOMAGOME 1-14cas/東京)など。

 
【関連リンク】
https://www.the-white-jp.com/exhibition/2024/1005/?utm_source=BenchmarkEmail&utm_campaign=Oct%2c2024_スプラウト&utm_medium=email

展覧会概要

出展者 河田展子+渡邊聖子
会期 2024年10月5日(土)~11月3日(日)
会場名 ALTERNATIVE SPACE The White

※会期は変更や開催中止になる場合があります。各ギャラリーのWEBサイト等で最新の状況をご確認のうえ、お出かけください。

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