大塚 勉「TRANS-BODY」©Tsutomu Otsuka
東京目黒のコミュニケーションギャラリーふげん社で大塚 勉「TRANS-BODY」が開催される。本展はふげん社から刊行される同名の写真集の刊行記念展となる。
大塚勉は、1951年千葉県浦安市の漁師の息子として生まれた。1971年に東京工芸大学を卒業。豊かな遠浅の海であった浦安の埋め立て工事が急速に進んだ頃、埋立地が大塚にとっての創作の場となり、1969〜1972年に8ミリカメラで何本かの実験映画を制作した。1971年からは埋立地の景色の撮影も始めている。
本展では「沼現像」と呼ばれる独自の手法で制作された、大塚の代表作である3つのシリーズ「根茎」「地の刻」「TRANS-BODY」を集成した新刊写真集『TRANS-BODY』の収録作品から、約40点を展示する。
1991年から1998年ごろに制作された本シリーズは、印画紙を漂白したのち、沼に1週間沈める「沼現像」によって制作された。沼という「自然の暗室」によって、印画紙が茶色や青色の独特の色合いに染まり、時に沈澱した落ち葉の模様が残ったり、銀が浮いてきたりして、唯一無二の物質感のあるプリントが出来上がる。
自身を含む男性と女性の身体の一部や、植物をクローズアップで撮影し、それらのネガを複数枚合成して得られたイメージは、男と女、人間と植物、生と死といった境界線を融解した原初的な生命体のように見える。「沼現像」は、それらの命の姿を、沼という地球の羊水に回帰させる試みのようだ。
また、本展では、「沼現像」作品と合わせて、大塚が2011年の東日本大震災後に福島県相馬市に訪れ、津波で流された不特定多数のアルバム写真を複写し、「銀現像」を施した作品も合わせて展示する。腐葉土と共にホットプレートで印画紙を煮沸し写真を銀化させる「銀現像」によって、100年の時間の経過を一枚のプリントに凝縮し、人々の記憶と時間が重なり合う、モノとしての写真を表現した。
本展で発表する作品はいずれも、浦安のゼロメートル地帯で育まれた土と水の感覚、そしてそれらの原風景が清々しいまでに更地となったあとに、映画制作で自作自演のパフォーマンスをした身体的経験、そして写真というメディアに対する実験的精神が、渾然一体となって昇華したものであると言える。
- ■展覧会情報
大塚 勉「TRANS-BODY」
会期:2024年5月31日(金)~6月23日(日)
時間:12:00〜19:00(土日は18:00まで)
休廊日:月曜日
会場:コミュニケーションギャラリーふげん社
住所:東京都目黒区下目黒5-3-12- ■トークイベント
2024年6月1日(土)14:00〜15:30
大塚勉×飯沢耕太郎(写真評論家)
※トーク終了後にオープニング・レセプションを開催する。
チケットは、オンラインストアから購入。
https://fugensha-shop.stores.jp/
■写真集
大塚勉『TRANS-BODY』
寄稿:飯沢耕太郎
デザイン:宮添浩司
サイズ:A4変型(210×287mm)
仕様:スイス装・コデックス装/96頁
発行所:ふげん社(2024年5月5日)
定価:4,400円(税込)
https://fugensha-shop.stores.jp/items/6624d9876d07c107689833b0
【関連リンク】
https://fugensha.jp/events/240531ohtsuka/
出展者 | 大塚 勉 |
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会期 | 2024年5月31日(金)~6月23日(日) |
会場名 | コミュニケーションギャラリーふげん社 |
※会期は変更や開催中止になる場合があります。各ギャラリーのWEBサイト等で最新の状況をご確認のうえ、お出かけください。
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