フジフイルム スクエア 写真歴史博物館で企画写真展、有田泰而「First Born ―家族と遊ぶ時間とき―」が開催される。
写真家・画家として生きた有田泰而の代表作「First Born」シリーズを中心とする、稀代の家族写真を展示する。
広告写真家として活躍する傍ら、自らの美意識に忠実な創作に取り組んだ有田泰而。
1960年代後半から70年代半ば、彼が当時の妻ジェシカと第一子コーエンを撮影した写真の数々は、普遍的な愛や安らぎにとどまらない、撮る側と撮られる側、双方の無邪気な遊び心に満ちあふれている。その一連の作品は、編集者山岸章二によって見いだされ、1973年から1974年、『カメラ毎日』誌上で「First Born」シリーズとして発表される。同誌には、シリーズの前身と言える妊娠中のジェシカの写真、家族の後日の姿を収めた写真も掲載された。しかし、その後それらの作品が発表されることは長らくなかった。
再び日の目を見るのは2012年、有田がアメリカで亡くなった翌年のこと。若き日に「First Born」シリーズに憧れて有田の門を叩き師事した写真家上田義彦が、生前に有田が構想したノートをもとに、2か月近い格闘の末、印画紙に定着させた。30年の時を経た師弟の邂逅は、『カメラ毎日』誌上で発表された「幻の傑作」から新たにセレクトし75点を収めた写真集『First Born』と、同名の展覧会として結実する。
素の振る舞いと演出が混じる「遊戯」により、ポートレート、スナップ、パフォーマンスの要素が重なる有田泰而の家族写真。その瑞々しさと際立つ存在感は、「家族と遊ぶ時間とき」が有田、妻、子の自由の発露となっていたからかもしれない。
このシリーズはわたしたちふたりにとってたいへん貴重な経験です。お互いのコミュニケーションがよくいっているときには、ほんとにいい写真ができる。しかし問題はどんな写真ができたか、というだけにとどまりません。これはそのままわたしたちの人生(生活)に対する問いかけのようなものでもあります。
(ジェシカの「First Born」によせた言葉『カメラ毎日』1974年5月号)
30数年ぶりに、師、有田泰而の残した写真と、暗室の中で2か月近く格闘しました。そのプリントたちとの奇跡の再会は、私に人生の不思議と奥深さを感じさせ、そして同時に、壮年期の有田泰而の姿や言葉を鮮明に思い起こさせてくれました。
(上田義彦)
■展覧会情報
有田泰而「First Born ―家族と遊ぶ時間とき―」
会期:2024年5月23日(木)~8月28日(水)
時間:10:00〜19:00(最終日は16:00まで、入館は終了10分前まで)
休廊日:会期中無休
会場:フジフイルム スクエア 写真歴史博物館 企画写真展
住所:東京都港区赤坂9-7-3 東京ミッドタウン・ウェスト1F
■プロフィール
有田泰而 (ありた・たいじ)
1941年、福岡県に生まれる。写真家、画家。小倉で育つ。中央大学法学部中退後、東京綜合写真専門学校で石元泰博に学ぶ。在学中から日本デザインセンターに在籍し、1967年、独立。ファッションやコマーシャルの写真を多数手がける。1973年~1974年『カメラ毎日』誌で当時の妻ジェシカと第一子コーエンを撮影した一連の作品、「First Born」を発表。1980年頃から撮影のかたわら油彩画を始める。1988年に画集『裸者の森』を発表。北米で数回の転居の末、2000年に北カリフォルニアのレッドウッドの森に移住し、妻とともにテント生活をしながら絵画や彫刻を制作。2011年7月17日、カリフォルニア州フォートブラッグにて没した。70歳。2012年、写真集『First Born』(赤々舎)刊行、写真展「First Born」(Gallery 916)開催。
上田義彦 (うえだ・よしひこ)
1957年、兵庫県に生まれる。写真家。多摩美術大学教授。福田匡伸、有田泰而に師事。1982年、独立。東京ADC賞、ニューヨークADC、日本写真家協会作家賞など、国内外のさまざまな賞を受賞。2011年にGallery 916を主宰。代表作に、『Quinault』、『AMAGATSU』、『at Home』、『Materia』、『A Life with Camera』、『FOREST 印象と記憶 1989-2017』、『Māter』、『いつでも夢を』などがある。また、2021年に公開された、映画『椿の庭』は大きな反響を呼び、映画監督としての活躍も注目されている。
【関連リンク】
https://fujifilmsquare.jp/exhibition/240523_05.html
出展者 | 有田泰而 |
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会期 | 2024年5月23日(木)~8月28日(水) |
会場名 | フジフイルム スクエア |
※会期は変更や開催中止になる場合があります。各ギャラリーのWEBサイト等で最新の状況をご確認のうえ、お出かけください。
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