岸幸太の「連荘」は、街を歩き回り、写真を撮ることでそれぞれの街の歴史を嗅ぎとろうと探求を続ける新たな制作を試みるシリーズとなっている。2024年3月に行われた展示にあわせて中綴じの小冊子も刊行している。
5作目となる本作は、大阪市内で撮影された写真を中心に構成されている。岸が長年にわたって撮影を重ねてきた大阪の釜ヶ崎や近隣の街の中で写された、アーケード脇の商店街や空き店舗のシャッター、薄汚れた壁の落書きやその街に暮らす人々の姿、公園を覆うフェンスや老朽化した家のトタン板などの写真からは、街の中で普段私たちが見過ごしてしまうような人の姿や物の在りようを、観念や感情の向こう側で注視する作者の一貫した姿勢が伝わってくる。
街を構成する建物や看板の文字、壁の染みや汚れ、粗大ゴミ。一見すると目をそむけてしまうような要素で構成されているが、作者の目は冷静に実存主義を写真行為でもって徹底しているようにも思える。
- 岸幸太『連荘 5』
- 仕様:A4判/中綴じ/カラー40頁
発行:KULA
発売:photographers’ gallery- 定価:1,500円(税別)
PCT Membersは、Photo & Culture, Tokyoのウェブ会員制度です。
ご登録いただくと、最新の記事更新情報・ニュースをメールマガジンでお届け、また会員限定の読者プレゼントなども実施します。
今後はさらにサービスの拡充をはかり、より魅力的でお得な内容をご提供していく予定です。