top 本と展示展覧会ピックアップ東京神宮前のLAGで半田颯哉「public void re-anthropocentrism()」が開催

東京神宮前のLAGで半田颯哉「public void re-anthropocentrism()」が開催

2024/02/08

東京神宮前のLAGで半田颯哉「public void re-anthropocentrism()」が開催される。
 
半田は1994年生まれ、広島で育ち現在は東京を拠点に活動するアーティストであり、インディペンデントキュレーターとして展示企画も行っている。本展で半田は、AIのような高度に発展した技術と人間の関係性――どのように人間は科学技術に向き合うべきか――に取り組んだ新作を発表する。
 
半田は2019年に東京芸術大学大学院美術研究科先端芸術表現専攻修士課程を修了したのち、アーティスト、インディペンデントキュレーターとしてキャリアを重ねている。2023年には、アーティストとしてアーツカウンシル東京の助成を受けて個展を開催し、キュレーターとしては広島で原爆をテーマにしたグループ展”Take it Home, for (__) Shall Not Repeat the Error.”をキュレーションしました。同年8月に東京へと巡回したこのプロジェクトは、2025年にニューヨークのノンプロフィットギャラリー、apexartでの展示も決まっている。また、芸術実践だけでなく、日本の1980年代のビデオアートに焦点を当てた研究を行い、2023年に東京大学大学院学際情報学府修士課程を修了している。
 
本展で発表する新シリーズでは、半田は写真を用いて主体性の重要性を問いかける。写真を作品に取り入れるとき、多くの候補の中から作品に最も適合する写真を選ぶプロセスが生じますが、半田はこうした多から一を選ぶプロセスは、AIによってコンテンツを生成することにも共通するという。そして、何がそれを生成したのかではなく、誰が選んだかが重要であり、それこそが制作者であるということなのだと強調する。
 
こうした主体性の重要性を本展で半田は重ねて強調する。別の新作では、千円札のイメージを再生産しその作品の価値を問う。紙幣の価値は人々の信用によって成り立っており、価値があると信じる人々の中でのみ価値が通用するし、信用を失えば単なる印刷の施された紙となってしまう。そうした貨幣の原則を踏まえた上で、半田は自身の再生産した千円札のイメージを「価値があると信じることはできるか」と突き付けてくる。そこに価値が生じるかどうか、その判断基準を自身に持ち、判断自体を引き受けることが求められる。
 
この展覧会で示されているのは、「ポスト人間中心主義」への疑いだ。半田はいま興っている人間中心主義への反発を、環境破壊を起こしてきた人類の反省の文脈から来た「ポスト人新世」と、AIの急速な発達から生じる「ポストヒューマニズム」、大きく2つの視点から生じていると捉えている。そして、半田自身は環境保護活動の使命に共感しており、技術の進歩に肯定的であるにもかかわらず、こうした「ポスト」の視点に潜む無責任性を見据えている。
 
ここで問題となるのが、まさに「主体性はどこにあるのか」ということだ。気候変動を引き起こしたのも、技術を発展させ続けてきたのも自分たち人類なのだから、自分たちこそがその歴史に負う責任に向き合わなければならないのではないか。このように歴史への責任を考える半田は、そして同時に、未来への責任についても次のように述べている。

 

  • 気候変動を阻止しようとするのは誰か? 新しい技術を利用するのは誰か? 私たちはそうした主体性を意識し続けるべきなのです。意思のある限り、私たちは純粋な『客体(オブジェクト)』になることはできないのだから。

 
ポスト人新世やポストヒューマニズム的な言説に対して批判的でありつつも、半田が主張したいのはそこで旧来の人間中心主義に戻れということではない。半田にとって旧来の人間中心主義は自己中心的であり、やはり批判すべき対象だ。だからこそ半田は、「re-anthropocentrism(人間中心主義を、改めて)」を掲げる。本展で半田が示したいのは、思考の中心を私たち人間に向け直し、私たちが私たち自身のことをもっと信じようということなのだ。
 

  • ■展覧会情報
    半田颯哉「public void re-anthropocentrism()」
    会期:2024年1月26日(金)~2月24日(土)
    時間:13:00〜19:00
    休廊日:日曜日、月曜日、祝日
    会場:LAG
    住所:151-0001 東京都渋谷区神宮前2-4-11 Daiwaビル1F

 

【関連リンク】
https://www.live-art-books.jp/lag/exhibition/souyahanda/

展覧会概要

出展者 半田颯哉
会期 2024年1月26日(金)~2月24日(土)
会場名 LAG(LIVE ART GALLERY)

※会期は変更や開催中止になる場合があります。各ギャラリーのWEBサイト等で最新の状況をご確認のうえ、お出かけください。

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