千賀健史「まず、自分でやってみる。」©Kenji Chiga
東京・丸の内のBUGで千賀健史個展「まず、自分でやってみる。」が開催される。
千賀は2017年の第16回写真「1_WALL」に、インドのカースト制度、貧困、学歴社会をテーマにした作品“Bird, Night, and then”で応募し、グランプリを受賞した。「1_WALL」では、社会で起こる事象を構造的に捉えた視点や、フィクションとノンフィクションを交錯させる編集力、写真媒体の活用の巧みさなどが評価された。2018年には自身初の個展「第16回写真「1_WALL」グランプリ個展“Suppressed Voice”」をガーディアン・ガーデンにて開催。 国外での評価としては、中国の「第8回大理国際写真展」にて最優秀新人写真家賞を受賞(2019)、フランスのアルル国際写真祭「The Luma Rencontres Dummy Book Award Arles」ショートリスト入り(2019,2022)、イギリスでは『British Journal of Photography』が選ぶ今年注目の写真家に選出される(2021)など、世界各国で作品を発表し評価を得ている。
これまで、貧困や自殺の連鎖、スティグマ(特定の属性や事象への差別・偏見)といった千賀自身の身近に存在する社会問題を起点に、その問題を引き起こす社会的な構造や関係者それぞれの視点を顕(あらわ)にする作品を発表してきた。その問題や関係者に対する千賀の視点は俯瞰的であり、また数年にわたる入念なリサーチによって中立性を担保しようという姿勢が見受けられる。そして、その根底には、二元論による対立構造を回避しようとする意識や、鑑賞者が社会問題に対して当事者意識を持つことへの期待があり、作品は鑑賞者が社会や他者への想像力を働かせる端緒(たんしょ)となってきた。
千賀は写真家としてキャリアをスタートしたが、作品は写真だけでなく、映像や書籍、装置、それらを含むインスタレーション等、その時々のテーマに対して最適な表現手法を選択している。また、事実をただ写すことだけが問題に迫る方法ではないという考えのもと、作品はリサーチがベースでありながらも、常にフィクションが交えられている。
本展では、2019年から約3年間にわたり千賀がリサーチしてきた特殊詐欺を起点に、それを取り巻く社会構造や個々人をテーマとした新作を展示する。特殊詐欺による被害額が最大となった2014年から、千賀が初めてこのテーマで作品を発表した2021年まで、被害は減少傾向にあったが、コロナ禍を経て2022年には8年ぶりに増加した。その背景には社会や時代の変遷から影響を受けた個々の生活の変化があったはずであり、本展ではそこに焦点を当てた作品を発表する。
ビジネスパーソンや学生、観光客などの風貌をした様々な人が行き交う東京駅。そこからほど近いBUGで、一つの犯罪を取り巻く犯罪者、被害者、関係者の多面的な視点が顕(あらわ)になる。もしかしたら、あなたや行き交う人々にとっては、犯罪者、被害者どちらの立場も一見ゆかりのないものに感じられるかもしれない。しかし、それでも本展を見た後は、社会で生きる私たちの複雑なつながり、またお互いの影響について想いを馳せずにはいられなくなるかもしれない。
- ■プロフィール
千賀 健史(ちが・けんじ)
1982年滋賀生まれ。2008年大阪大学基礎工学部卒業。第16回写真「1_WALL」グランプリ、第44回キヤノン写真新世紀優秀賞、第8回大理国際写真展最優秀新人写真家賞を受賞。また、アルル国際写真祭The Luma Rencontres Dummy Book Award Arles2019,2022ショートリスト入り。
主な展覧会に、第16回写真「1_WALL」グランプリ個展“Suppressed Voice”(ガーディアン・ガーデン、2018)、「写真新世紀展2021」(東京都写真美術館、2021)、千賀健史個展“Hijack Geni”(Reminders Photography Stronghold、2022)、プリピクテジャパンアワード「Fire & Water」(東京都写真美術館、2022)がある。
■展覧会情報
千賀健史個展「まず、自分でやってみる。」
会期:2024年3月6日(水)~4月14日(日)
時間:11:00〜19:00
休廊日:火曜日
会場:BUG
住所:100-6601東京都千代田区丸の内1-9-2 グラントウキョウサウスタワー1階
【関連リンク】
https://bug.art/exhibition/chiga-2023/
出展者 | 千賀健史 |
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会期 | 2024年3月6日(水)~4月14日(日) |
会場名 | BUG |
※会期は変更や開催中止になる場合があります。各ギャラリーのWEBサイト等で最新の状況をご確認のうえ、お出かけください。
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