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東京国立近代美術館で「中平卓馬 火―氾濫」が開催

2023/11/28

中平卓馬《「氾濫」より》1971年、発色現像方式印画、42.0×29.0cm 東京国立近代美術館 ©Gen Nakahira

 

 

東京国立近代美術館で「中平卓馬 火―氾濫」が2024年2月6日(火)から開催される。
 

  • 日本の写真を変えた、伝説的写真家 約20年ぶりの大回顧展
    日本の戦後写真における転換期となった1960年代末から70年代半ばにかけて、実作と理論の両面において大きな足跡を記した写真家である中平卓馬(1938-2015)。その存在は森山大道や篠山紀信ら同時代の写真家を大いに刺激し、またホンマタカシら後続の世代にも多大な影響を与えてきた。
     
    1960年代末『PROVOKE』誌などに発表した「アレ・ブレ・ボケ」の強烈なイメージや、1973年の評論集『なぜ、植物図鑑か』での自己批判と方向転換の宣言、そして1977年の昏倒・記憶喪失とそこからの再起など、中平のキャリアは劇的なエピソードによって彩られている。しかしそれらは中平の存在感を際立たせる一方で、中平像を固定し、その仕事の詳細を見えにくくするものでもあった。
     
    本展では、あらためて中平の仕事をていねいにたどり、その展開を再検証するとともに、特に、1975年頃から試みられ、1977年に病で中断を余儀なくされることとなった模索の時期の仕事に焦点を当て、再起後の仕事の位置づけについてもあらためて検討する。
     
    2015年に中平が死去して以降も、その仕事への関心は国内外で高まり続けてきた。本展は、初期から晩年まで約400点の作品・資料から、今日もなお看過できない問いを投げかける、中平の写真をめぐる思考と実践の軌跡をたどる待望の展覧会となる。

 

  • ■見どころ
    これまで未公開の作品を多数展示  
    近年その存在が確認された《街路あるいはテロルの痕跡》の1977年のヴィンテージ・プリントを初展示。昏倒によって中平のキャリアが中断する前の、最後のまとまった作品発表となった雑誌掲載作13点。2021年に東京国立近代美術館が本作を収蔵して以来、今回が初めての展示となる。また1976年にマルセイユで発表されて以来、展示されることのなかった《デカラージュ》など、未公開の作品を多数展示する。
     
    カラー写真の重要作を一挙に展示
    1974年に東京国立近代美術館で開催した「15人の写真家」展の出品作《氾濫》をちょうど半世紀ぶりに同じ会場で再展示する。カラー写真48点組で構成される幅約6メートルの大作で、中平のキャリア転換期における重要作だ。
    また、中平存命中最後の重要な個展「キリカエ」(2011年)に展示されたカラーの大判プリント64点を展示する。
     
    雑誌から読み解く中平の試み
    『アサヒグラフ』や『朝日ジャーナル』など、キャリア前半の1960年代から1970年代前半にかけて発表された作品の掲載誌を多数展示。当時、雑誌は社会にイメージを流通させる手段として重要な役割を担っていた。写真がどのように流通するかについて常に意識的だった中平が、同時代の社会に対して、写真を用いて何を試みようとしていたのか、その実態を紹介する。
     
    展覧会構成・主な展示作品
    本展は初期から晩年にいたる中平卓馬の仕事を、5つの章でたどる。とくに2~4章では、1977年に不慮の昏倒と記憶喪失により中断した中平の仕事が、どこへ向かおうとしていたのか、そこにいたる70年代の展開を詳しくひもとく。
     
    第1章 来たるべき言葉のために
    第2章 都市・風景・サーキュレーション
    第3章 植物図鑑・氾濫
    第4章 島々・街路
    第5章  写真原点

 

  • ■展覧会情報

「中平卓馬 火―氾濫」
会期:2024年2月6日(火)~4月7日(日)
時間:10:00〜17:00(金曜・土曜は10:00〜20:00)入館は閉館30分前まで
休廊日:月曜日(ただし2月12日、3月25日は開館)、2月13日
会場:東京国立近代美術館 1F企画展ギャラリー
住所:102-8322 千代田区北の丸公園3-1
観覧料:
一般1,500円(1,300円)
大学生1,000円(800円)

( )内は20名以上の団体料金。いずれも消費税込。
高校生以下および18歳未満、障害者手帳をお持ちの方とその付添者(1名)は無料。それぞれ入館の際、学生証等の年齢のわかるもの、障害者手帳等を提示。
キャンパスメンバーズ加入校の学生・教職員は、学生証・職員証の提示により団体料金で鑑賞可。
本展の観覧料で入館当日に限り、所蔵作品展「MOMATコレクション」(4-2F)、コレクションによる小企画「新収蔵&特別公開|ジェルメーヌ・リシエ《蟻》」(2F ギャラリー4)も鑑賞可。

 

■プロフィール
中平卓馬(なかひら・たくま)
1938年東京生まれ。1963年東京外国語大学スペイン科卒業、月刊誌『現代の眼』編集部に勤務。誌面の企画を通じて写真に関心を持ち、1965年に同誌を離れ写真家、批評家として活動を始める。
1966年には森山大道と共同事務所を開設、1968年に多木浩二、高梨豊、岡田隆彦を同人として季刊誌『PROVOKE』を創刊(森山は2号より参加、3号で終刊)。「アレ・ブレ・ボケ」と評された、既成の写真美学を否定する過激な写真表現が注目され、精力的に展開された執筆活動とともに、実作と理論の両面において当時の写真界に特異な存在感を示した。
1973年に上梓した評論集『なぜ、植物図鑑か』では、一転してそれまでの姿勢を自ら批判、「植物図鑑」というキーワードをかかげて、「事物が事物であることを明確化することだけで成立する」方法を目指すことを宣言。翌年、東京国立近代美術館で開催された「15人の写真家」展には48点のカラー写真からなる大作《氾濫》を発表するなど、新たな方向性を模索する。そのさなか、1977年に急性アルコール中毒で倒れ、記憶の一部を失い活動を中断。療養の後、写真家として再起し、『新たなる凝視』(1983)、『Adieu à X』(1989)などの写真集を刊行。2010年代始めまで活動を続けた。2015年逝去。
1973年、自己批判を機に、それまでのプリントやネガの大半を焼却したとされていたが、2000年代初頭、残されていたネガが発見され、それをきっかけとして2003年には横浜美術館で大規模な個展「中平卓馬:原点復帰-横浜」が開催された。


【関連リンク】
https://www.momat.go.jp/exhibitions/556

展覧会概要

出展者 中平卓馬
会期 2024年2月6日(火)~4月7日(日)
会場名 東京国立現代美術館

※会期は変更や開催中止になる場合があります。各ギャラリーのWEBサイト等で最新の状況をご確認のうえ、お出かけください。

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