アマチュアという言葉がある。大辞泉によると「芸術・スポーツなど、職業としてではなく、趣味として愛好する人」とある。写真の場合、アマチュア写真もしくはアマチュア写真家という呼び方で通用される。その反対であるプロの写真家は職業としてカメラを操作し、写真を撮る人ということであろう。プロといわれる職業人の範囲を考えたとき、大雑把な言い方をすれば、写真を撮ってそれで生計をたてている、ということであろう。プロの場合、カメラとその周辺にある機材やこれらの扱いながらどう写るかを計算して撮る。いわば職人に近い。
アマチュア写真家は一定数いるだろう。日曜画家という呼び名はいまはないかもしれない。ところでアマチュア小説家はいるだろうか。もしくはアマチュア批評家はいるだろうか。昨今は芥川賞や直木賞を受賞しても、小説だけで食べている人は少ないと聞く。批評はどの分野においても壊滅状態にあるが、僅かながらの批評家は学校などで教えながら研究論文とは別に書いているという状況であろうと察する。
アマチュア写真家はすでに確立している。アマチュア写真家が本領を発揮するのは、スナップ写真であろう。あるいはアマチュアの多くはスナップを撮っている。『されど』の作者がアマチュアかどうかはわからない。ただ写真を見る限り、大阪の町を中心にしたスナップは、アマチュアの写真を思わせる。
それにしても写真はなぜアマチュアで通用するのであろうか。たぶんカメラという機械を使用しているからかもしれない。この装置を手にしているだけで、自ずと経済的余裕があるのだと察せられる。しかしスマホにカメラが付いている現在、ほとんどの人がシャッターを押している。そんな時代状況の中でカメラを持ってスナップすることは、ちょっと特別なことかもしれない。『されど』の写真を見ると、スナップすることの覚悟と写真表現に対する誠実さが伝わってくる。
- 脇田耕二写真集『されど』
- 出版:蒼穹舎
- 発行日:2023年10月20日
- 仕様:250部、A4変型、上製本、モノクロ84ページ、作品79点
編集:大田通貴
装幀:塚本明彦/赤川延美(タイプセッティング)- 価格:4,000円(税別)
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