『VACUUM』11号が刊行された。参加した写真家は谷口琴音、山田省吾、後藤渚、越野亮介、阿部淳、林軒朗、平野祐子、平野明、瀬頭順平、鈴木拓也。以前も本HPで紹介したことがあるが、編集方針と造本は変わることなく、その姿勢は一貫している。一言でいえばスナップ写真の集積であるが、あたりまえだが一人ひとりその作風は異なる。具体的な場所の明示はないが、様々であるように思える。
本書の造本について触れてみたい。A4サイズの二つ折りで、紙質はやや厚い。表紙と本文の同じ紙を用いているので、束のような感触がある。ホチキス留めではなく、よじれた赤と白のゴムで折り部分を抑えている。実に物質的な造本となっている。写真はすべて裁ち落としのため、余白はない。だからであろうか本でありながら、書物という巧緻に設計された造形でなく、モノ感が強い。ぶっきらぼうとも感じるこの作りが、本書の写真を印刷し、束ねるにはちょうど合っている。
スナップ写真特有の反射神経と街の中に入ってゲリラ的に撮影するという手段は、ある種の傍若無人さが求められる。この写真を書籍でまとめるとき、巧みにデザインされたものよりも、良い意味での粗雑さがあった方が似合っている。フォーマルでなくカジュアル。だからスナップはストリートでしか為しえないのかもしれない。
- 『VACUUM』11号
- 判型:280 × 207 mm
- 頁数:168頁
- 掲載作品:91点
- 製本:ソフトカバー
- 発行年:2023
- 価格:3,300円(税込)
【関連リンク】
PCT Membersは、Photo & Culture, Tokyoのウェブ会員制度です。
ご登録いただくと、最新の記事更新情報・ニュースをメールマガジンでお届け、また会員限定の読者プレゼントなども実施します。
今後はさらにサービスの拡充をはかり、より魅力的でお得な内容をご提供していく予定です。