top 本と展示写真集紹介うつゆみこ『Wunderkammer』

うつゆみこ『Wunderkammer』

2023/11/16
髙橋義隆

『Wunderkammer』は近作190点を収録した、うつゆみこにとって14年ぶりの新作写真集である。2023年11月から開催される「日本の新進作家vol.20」(東京都写真美術館)にも参加する。
 
うつゆみこの愛する動物、昆虫、植物、人、オブジェ、フィギュアなどを、心の赴くままに組み合わせ構成したセットアップ作品が放つ、美しく毒のあるシュールな世界観は、ひと目みればそのアクの強さにおののきそうだ。2人の娘を出産し、思い通りに制作の時間が取れなくなってからも、多くの人や動物や植物、自分の子どもをも制作に巻き込みつつ、日々の隙間をぬいながら、ダイナミックで自由闊達な作品を生み出し続けている。
 
タイトルの「ヴンダーカマー」(Wunderkammer)とは、ドイツ語で「驚異の部屋」という意味で、15世紀から18世紀にかけてヨーロッパで作られていた、珍品を集めた博物陳列室のことだという。本作にぴったりなタイトルといえよう。
 
独自のオブジェを作成し撮影する写真家としては、日本では今道子、海外ではジョエル・ピーター・ウィトキンなどが想起される。彼らの作品はその細部のこだわりぶりからある種のオブセッションを感じるが、うつゆみこの作品にも同様の強迫性は伝わる。しかし、先人の作品にくらべ、グロテクスさはありながらポップな感触があるのは、作者の感性の賜であろう。
 
差し込みの別紙に子豚の死体が腐敗していく様子が、定点観測のような撮影方法で掲載されている。生き物であると同時に人間の食材となる豚が小さな体で亡くなり、肉や皮が腐り、うじがわき、黒々とした体液が流れる様子を位置をずらすことなく捉えている。仏教画に女性の死体が腐敗していく様子を描写した「九想図」があるが、これは僧侶が俗世の欲望を断ち切り、美しいものもいずれ醜く腐臭を放つものになることを描くことで、世の無常を表現しようとした。子豚に生き物の愛嬌さを感じつつも、いずれ解体され、肉の断片となって人間に食されるかもしれない。その存在が朽ち果てていく姿を見ることで、生とは実に脆いものだと痛感させられる。本作の過剰さは生の発露が顕れているようだ。

 

  • うつゆみこ『Wunderkammer』
  • 定価:6,820円(税込)
  • 発行:ふげん社(2023年10月10日)
  • 写真・テキスト:うつゆみこ
  • デザイン:田中せり
  • 編集協力:飯沢耕太郎
  • 仕様:200×248mm /192P /並製本
  • 付録「Yaoyorozoo Paper」付き(寄稿:都築響一、飯沢耕太郎)

 

【関連リンク】
https://fugensha-shop.stores.jp/items/6513bd2a5d2d4e002facecc0

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