守田衣利『Moon Rainbow』がふげん社より刊行された。本作は「第4回ふげん社写真賞」グランプリ受賞作品である。
娘の誕生から18年間、幸せと安らぎ、苦しみと孤独が同時にあるような家族という存在を、カメラを通して見つめた。
守田衣利は、熊本県出身、カリフォルニア州サンディエゴ在住の写真家である。2024年に開催された第4回ふげん社写真賞で、過去最多となる192名の応募からグランプリを受賞し、2025年7月に『Moon Rainbow』をふげん社から刊行された。
本作は、2005年から2023年まで、娘が誕生してから大学に進学するまでの18年間の、家族3人の暮らしを記録したものだ。娘をニューヨークで出産した後、ハワイのマウイ島へ移住し、そこから定住の地を探す旅が始まった。東京、上海、熊本、宮崎、サンタモニカと点々とし、最終的にたどり着いたのがサンディエゴの海辺の街だった。
産婦人科の診察室のモニターで規則的に明滅する光を見た瞬間から、一人の人間が初めて笑い、立ち上がり、言葉を話し、さまざまな価値観を身につけていく過程は、作家にとってすべてが驚きの連続であり、それらは自らが更新されていく経験でもあったと言う。幸せや安らぎ、苦しみと孤独が同時にあるような、複雑で込み入った存在である家族を、カメラを通して日々記録することで、写真からその存在を理解しようとしてきた。
「幸せ、すれ違い、安らぎ、孤独──それらはすべて同じ場所に同時に存在する。家族というものは、なぜこれほどまでに複雑で、ときに痛みすら伴い、それでもなお、かけがえのない存在なのだろう」(本文より)
透徹した視線と一定の距離感から家族を見つめ、18年という長い年月で捉えた写真の束は、プライベート・ドキュメンタリーという範疇にとどまらず、時空や国境を越えた、家族という普遍的な物語へと接続するだろう。
- 守田衣利『Moon Rainbow』
発行日:2025年7月6日- 発行所:ふげん社
造本設計:町口 覚
サイズ:A4変形(215×245mm)
仕様:上製本、140ページ、掲載写真82点
価格:6,600円(税込)
【関連リンク】
https://fugensha-shop.stores.jp/items/684e6c5f8fe718e26ffae50e
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