『光のまち』(GRAF Publishers刊)の作者である本庄佑真は1983年鳥取県生まれ。尾仲浩二を中心とするギャラリー街道を中心に活動している。
本書で撮影している先は西日本地域である。地元である鳥取県をはじめ、関西、山陰、山陽、四国、九州、沖縄と各地を歩いている。作者は「高湿度や天気の悪い山陰の気候に飽きて、どこか明るい光を求めて写真を撮りに行っていたのかもしれません」とあとがきで述べている。ここで書かれているように、写真の多くは強い光に照らされた時間に撮影されたものが選ばれている。
カメラのデータがないので憶測でしかないが、色味を見るとネガフィルムで撮影しているのではないかと想像する。太陽の光に照らされた光景が、色に濃さを増しているようだ。この質感と西日本の風景が絶妙に合い、巻末にあるデータがなければ昭和に撮影されたと言われても納得してしまうだろう。
地方にある都会から外れ、人もまばらな地域を見るとき、なぜ懐かしさを覚えるか。こうした地方を原風景としてもたない人でも、そう感じるのではないだろうか。なぜ、田舎の風景に郷愁を喚起されるのだろうか。
ここで深く追求しても字数に限りがある。『光のまち』のページをめくりながら、郷愁という現象について考えを巡らせるのもよいかもしれない。
なお、本書のデザインは加藤勝也氏、印刷はサンエムカラーである。この色味の表現力は職人的な手腕をもつこの組み合わせが最適であろう。
- 本庄佑真 写真集『光のまち』
- 発行:GRAF Publishers
- 発行:2023年5月13日
- 判型:A4変型版横本・上製本・写真76点・92ページ
- 編集発行人:本山周平
ブックデザイン:加藤勝也- 価格:4,400円(税込)
- https://graf-publishers.com/2023/04/30/【新刊のお知らせ】『光のまち』本庄佑真-honjo-yuma/
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