タイトルである『フラグメントライト(fragmentlight)』を日本語に訳すと、光の欠片といったところであろうか。一見すると直接的なタイトルにようにも思えるが、ページをめくると、なるほど光の欠片がここにあると納得してしまう。
作者である林朋奈は東京新宿にあるサードディストリクトギャラリーのメンバーである。いわゆる自主ギャラリーとよばれ、メンバーとなって運営費を負担しながら自分の作品を発表する場として機能している。すでに老舗のギャラリーだが、林が参加したのは5年ほど前であろうか。記憶が曖昧で申し訳ない。
当初はモノクロ作品だったが、しばらくしてカラーで撮影するようになった。モノクロよりカラーの方が林の感性に適していたようで、「こっちの方がいいですね」と月並みで語彙力の乏しいアホな感想(実際、筆者はアホだ)しか出てこなかった。理屈を越えた感覚が林の写真に内在している証拠であろう。
写真は感覚値が求められると同時に、その感覚だけで作品ができてしまうこともある。かと言って思考が必要ないわけではない。技術が求められる面もある。しかし、感性だけで突き抜ける写真があることも事実だ。こうした写真作品は言葉にしづらい。言葉にしづらいから写真として成立する、ともいえる。
本書に同封された冊子に林が印刷に立ち会った日記が掲載されている。長野県松本市にある印刷会社に趣き、そこで出会った人や光景をただ書いているだけだが、なぜか面白い。突飛な出来事に遭遇したわけではない。人と話、食べて、飲んだだけのことだ。でも読めてしまう。この文章の書き手が写真を撮ると、鮮烈な光と色でもって構成された世界で展開されることを思うと、林朋奈の感覚値は写真との相性がよいといえる。写真が写真としてただそこにあるだけの希有な作品集だ。
- 『フラグメントライト』
- 著者:林朋奈
発行:サードブックス- 定価:5,500円(税込)
- 発行日:2023年3月
- A4判 変型/上製本/写真55 点/80頁
- http://www.3rddg.com/exhibition/2023.3.28/hayashi_tomona.html
- ▶︎3rddgbooksWebShop
https://3rddgbooks.stores.jp/
▶︎林朋奈WebSite
https://hayashitomona.com/
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