松岡一哲「yellow」、2021 年
C プリント © Ittetsu Matsuoka / Courtesy of amanaTIGP
amanaTIGPにて、2023年4月22日(土)から5月20日(土)まで、松岡一哲の個展「what i know」が開催される。amanaTIGPでは3年ぶり、2度目の個展となる本展では、2020年から2023年にかけて日本各地やベトナムで撮影された作品群より約23点を展示。
松岡は、ポートレートやファッションを中心とした広告写真の分野で活躍を続ける一方で、日々の中で出会う風景や人物、植物などの日常を収めた写真作品を制作してきた。誰もが生活の中で触れうる景色にアナログならではの色彩や、ブレ・ボケによる独特な柔らかさが取り入れられたその作品群は、どこか現実性を欠落させた淡いトーンを纏いながらも、映し出されたすべてのものが等価な存在として顕在化されている。
近年松岡は、これまでに比べより抽象度を増した作品を多く制作しており、本展にて展示する新作では、色彩の粒子が靄のように広がり見せる「bloom」(2022年)や、青やかな色と有機的な揺らぎが特徴的な「frue」(2020年)など、写真における抽象表現への関心の強まりが見て取れる。また、松岡が幼少期から抱き続けている絵画作品への関心から育まれた作家特有のコンポジションは、画面上を区切る線やフォルム、時に色彩として、無意識にも確かな要素となり前作「やさしいだけ」とも連なりをみせるように多くのイメージに現れている。
- 思考(僕にとっては目)はどんどん飛翔し、僕の写真は抽象化され、
- 色だけになったりする。
- 形だけになったりする。
- そして、そこには他者と共鳴することの可能性を増すスペースが生まれる。
- (……)
- どんどん抽象化され、
- どんどん具象する。
- その狭間の写真であると。
- 2023年3月 松岡一哲
松岡の作品に潜む色や形といった漠然としたイメージは、音や匂いによって引き起こるプルースト現象(自伝的記憶想起)のそれのように、鑑賞者それぞれの中に眠る記憶を喚起し、作品と鑑賞者を巡る新たな関係性を構築している。新型コロナウイルス感染症の世界的大流行期であった2020年から2023年に撮影された作品を「記録写真」と呼称する松岡は、他者との繋がりが遮断された社会の中においても、変わらず「日常」へとレンズを向け世界と向き合い続けてきた。そうしてすくい上げられた無数の瞬間は、松岡の記録(記憶)として集積されたイメージとなり、私たちの中に点在する記憶と共鳴することでより力強く光を放っている。
■展覧会情報
松岡一哲「what i know」
会期:2023年4月22日(土)〜5月20日(土)
時間:12:00~19:00
休廊日:日曜、月曜、祝日
会場:amanaTIGP
住所:〒106-0032 東京都港区六本木 5-17-1 AXIS ビル 2F
【プロフィール】
松岡一哲(まつおか・いってつ)
1978年岐阜県生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒業後、スタジオフォボスに勤務し、独立。
フリーランスの写真家として活動するかたわら、2008年6月よりテルメギャラリーを立ち上げ、運営。主にポートレートやファッション、広告などコマーシャルフィルムを中心に活躍する一方、日常の身辺を写真に収め、等価な眼差しで世界を捉え撮影を続ける。主な個展に「やさしいだけ」タカ・イシイギャラリーフォトグラフィー/フィルム(東京、2020年)、「マリイ」Bookmarc(東京、2018年)、「マリイ」森岡書店(東京、2018年)、「Purple Matter」ダイトカイ(東京、2014年)、「やさしいだけ」流浪堂(東京、2014年)「東京 μ粒子」テルメギャラリー(東京、2011年)など。現在は東京を拠点に活動。
【関連リンク】
https://www.takaishiigallery.com/en/
出展者 | 松岡一哲 |
---|---|
会期 | 2023年4月22日(土)〜5月20日(土) |
会場名 | タカ・イシイギャラリー フォトグラフィー / フィルム |
※会期は変更や開催中止になる場合があります。各ギャラリーのWEBサイト等で最新の状況をご確認のうえ、お出かけください。
PCT Membersは、Photo & Culture, Tokyoのウェブ会員制度です。
ご登録いただくと、最新の記事更新情報・ニュースをメールマガジンでお届け、また会員限定の読者プレゼントなども実施します。
今後はさらにサービスの拡充をはかり、より魅力的でお得な内容をご提供していく予定です。