《家族全員でトラクターに乗って、チリ、サンチャゴ郊外》 1976年 田沼武能写真事務所蔵
ヒューマニスティックなまなざしで70年以上写真を通して人間のドラマを描き続けてきた日本写真界の巨匠「田沼武能 人間讃歌」が東京都写真美術館で開催される。
田沼武能は、 東京写真工業専門学校(現・東京工芸大学)卒業後 、 写真家・木村伊兵衛に師事し、『芸術新潮』の嘱託写真家として芸術家や文化人を撮影、その後はタイム・ライフ社の契約写真家となるなど、フォトジャーナリズムの世界で華々しい活躍を展開した。1972年からはライフワークとして世界の子供たちを撮影、黒柳徹子ユニセフ親善大使の各国訪問に私費で同行取材を行い、生涯で130を超える国と地域に足を運んだ。
田沼は国内外で精力的な取材活動を展開し、自身の作品を発表し続け、その旺盛な好奇心と行動力は生涯衰えることはなかった。その一方で、母校・東京工芸大学で後進の指導にあたり、日本写真家協会会長、日本写真著作権協会会長、日本写真保存センター代表など写真界の要職を歴任しながら、わが国の写真文化の普及啓発、写真の著作権保護にも力を注ぐなど、大きな役割を果たした。本展では未発表最新作 「武蔵野」を初公開するとともに、ヒューマニスティックなまなざしで人間のドラマを描き続けてきた田沼の70年を超える写真家としての軌跡を辿る。
第1章「戦後の子供たち」
自身も思春期を戦時下で過ごし、東京大空襲で凄惨な経験をした若き日の田沼は、生まれ育った下町で終戦後の東京で生きる子供たちの姿を活写しました。田沼は、著書の中で「子供は地球の鏡であり、歴史の鏡であり、時代の鏡である」という考え方を示しています。戦後の荒廃した日本で強く、たくましく生きる子供たちの姿とそのまなざしは、観るものを魅了する力強い生命力を感じさせる。
第1章「戦後の子供たち」では、生き生きとした子供たちの姿と、彼らが映す今は失われた昭和の日本の姿を63点の作品を通して伝える。
第2章「人間万歳」
何よりも人間の「生きる姿」に興味を持った田沼は、生涯のライフワークとして世界の子供たちをはじめ、世界の人々の写真を撮影することに注力した。1975年以降は発展途上国の子供たちにも目を向け、1984年からは黒柳徹子ユニセフ親善大使の緊急援助国訪問に毎年自費で同行取材を行った。この同行取材は、新型コロナウイルス感染症拡大により海外渡航が制限される前年の2019年まで、35年にわたり継続され、田沼は実に130を超える国々を訪問した。
第2章では、85点の作品を通して、田沼を魅了してやまなかった世界の子供たち、世界の人々のまなざしに触れる。
第3章「むさし野」
田沼は、多忙な海外取材の合間をぬって「武蔵野の自然」の撮影に取り組んだ。戦後の高度経済成長の陰で急速に姿を変えようとしていた日本の原風景に目を凝らし、あらゆる季節の「武蔵野」の姿を生涯追い続けた。東京の下町に育った田沼にとって、「武蔵野」に残る雑木林や野鳥の遊ぶ池、寺社などの姿が心象風景としての「ふるさと」のイメージそのものだった。
田沼が撮影し続けた「武蔵野」シリーズより、本邦初公開となる未発表作品を含む 57点を展示する。
- ■展示概要
- 「田沼武能 人間讃歌」
- 会期:2023年6月2日(金)〜7月30日(日)
- 時間:10:00〜18:00(木曜日・金曜日20:00まで)
休廊日:月曜日(月曜日が祝休日の場合は開館し、翌平日休館)、年末年始および臨時休館- 会場:東京都写真美術館B1F
- 所在地:東京都目黒区三田1-13-3 恵比寿ガーデンプレイス内
【プロフィール】
田沼武能(たぬま・たけよし)
1929年、東京浅草生まれ 2022年6月1日没。1949年にサン・ニュース・フォトスに入社後木村伊兵衛に師事。1966年、アメリカのタイム・ライフ社と契約。ライフワークとして世界の子供たち、人間のドラマ、 武蔵野や文士・芸術家の肖像を撮り続けた。1995年から2015年まで日本写真家協会会長を務める。同年、東京工芸大学教授に就任2004年より名誉教授。1979年モービル児童文学賞、1985年菊池寛賞などを受賞。1990年紫綬褒章、2002 年勲三等瑞宝章を受章、2003年文化功労者に表彰され、2019年に写真家初の文化勲章を受章。2020年朝日賞特別賞を受賞。
【関連リンク】
https://topmuseum.jp/contents/exhibition/index-4532.html
出展者 | 田沼武能 |
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会期 | 2023年6月2日(金)〜7月30日(日) |
会場名 | 東京都写真美術館 |
※会期は変更や開催中止になる場合があります。各ギャラリーのWEBサイト等で最新の状況をご確認のうえ、お出かけください。
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