東京・四谷のギャラリーヨクトにて、眞田百合子写真展『菫(すみれ)とわたし』が開催される。
眞田百合子(企画:山崎弘義)
- 家とはその人間を表すものの一つだ。家を見れば生活が分かる。そうすると、生き方がわかる。長く時間を過ごす場所の一つが家というものだ。
私は私の家が嫌いだ。なめくじの這った跡のように、私の生活の痕跡がまざまざと残されている。
私は私が嫌いだ。そんな私にも好きなものはある。それが人形だった。
写真を撮るということもまた、撮影者の人間性を写し出す行為だ。私はそれを生業にして生きている。私が私自身を嫌いであろうと、私は写真を撮ることをやめられない。そして、生活からも当たり前のように逃げられない。生活を撮る。すると自然に自宅や実家の写真も増えていく。私はもっと強烈に私の生活を強烈に写し出す方法を考えていた。
菫は私の人形だ。SPIRIT DOLLという香港のメーカーが作り出した菫は、どこか生きているにおいのするつくりをした人形だった。人形というものは不思議なことに、表情がその時々によって変わって見えることがある。それは鑑賞者を映す鏡なのか、はたまた魂が宿っているからなのかは分からない。人は生き物のかたちをした物に魂を見出す。しかし造形自体が変わることは決してない筈だ。それでも菫は、生きているにおいがする。菫は私の想像通りに、私の生活を演じてくれた。被写体が私ではなくとも、彼女が女優をしてくれるお陰でより強烈に私の生活は写し出された。写真は全て、私の家と実家で撮られたものである。どちらも私の汗や手垢の染み付いたような場所だ。そこに菫、彼女がある。美しい彼女も、そこに生きる人間のように留まる。
菫は私ではない。けれど菫は私だ。だから私と菫。菫とわたし。
■展示概要
眞田百合子写真展「菫とわたし」
期間:2023年3月8日(水)~3月18日(土)
時間:13:00〜19:00
会場:ギャラリーヨクト
所在地:〒160-0004 東京都新宿区四谷4-10 ユニヴェールビル102
電話:03-6380-1666
【写真家プロフィール】
眞田百合子(さなだ・ゆりこ)
1994年神奈川県生まれ、東京都在住。日本写真芸術専門学校卒業写真展コンペディション最優秀賞。後に中退。2022年に目黒のJam Photo Galleryにて開催された二人展JPG’s FAVEで、『世界が遠すぎる』を展示。
instagram:sanada_photogo
twitter :sanada_photo_z
【関連リンク】
http://blog.livedoor.jp/galleryyocto/archives/35416355.html
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