奈良原一高「海を渡る馬」、1961年、ゼラチン・シルバー・プリント、24.9 x 19.9 cm
© Narahara Ikko Archives / Courtesy of amanaTIGP
東京・六本木にある「amanaTIGP」にて、奈良原一高個展「Fashion」が開催される。
本展では1960年代に雑誌を主な発表媒体として制作したファッション写真のうち18点を展示する。生前最後の大規模個展となった世田谷美術館「奈良原一高のスペイン――約束の旅」(2019年)にて同ジャンルにおける奈良原の活動が紹介されたことは記憶に新しいが、東京都写真美術館での2004年の回顧展「時空の鏡:シンクロニシティ」以後、同作家によるファッション作品のヴィンテージプリントが展示されるのは19年ぶりとなる。
奈良原一高『奈良原一高写真集―時空の鏡―』(新潮社/2004年)p.94
- 大学院で美術史を学んでいた僕には、ファッション写真は最もアートに近い分野に思えた。何よりも生きた人間が身に纏って表現する「生きている造型」としての魅力があった。その舞台では、自分のアイディアで演出できる「作る写真」と「撮る写真」を融合する可能性が発見できそうだった。毎日どれだけでも楽しく撮り続ける自信があった。[…] 何もかもが未知の体験だった。そのワクワク感が60年代だった。
1962年から3年間、欧州に滞在し制作した作品群をまとめた写真集『ヨーロッパ・静止した時間』、そして帰国後に日本の伝統文化を見つめた「ジャパネスク」シリーズといった代表作が生み出された同時期において、奈良原は雑誌を中心にファッション写真を精力的に発表している。
『アサヒカメラ』では1962年に「モード写真の周辺」と題された毎月一つのテーマからなる連載に1年間取り組み、そのタイトルが示唆するようにファッション写真への新たなアプローチを提示した。1959年に『装苑』の編集者とアトリエを訪問したことを契機に長きにわたる交友関係を築いた森英恵とは幾多のコラボレーションを行い、富士紡績株式会社のカレンダー作品のほか、1969年には田中一光および成島東一郎と共同で監督を務めたプロモーション・フィルム「ザ・ワールド・オブ・ハナヱ・モリ」を制作した。さらに『婦人公論』では、奈良原の写真集も手がけたグラフィックデザイナーの勝井三雄とタッグを組み、画面を上下で二分割した斬新なレイアウトの表紙を1969年から70年の間に発表している。
本展で展示される作品は『婦人画報』や『ハイファッション』といった服飾雑誌のほか、『日本カメラ』など写真専門誌の表紙や誌面を飾ったものだ。被写体は森英恵や伊東孝がデザインした衣服が多くを占め、モデルはパリ・コレクションに参加したことでも著名な松本弘子らが務めている。
奈良原はかつてファッション写真を「文明批評」と語っていますが、流行(モード)を社会に生み出すべく作り上げられたスタイルブックとしてのイメージは、それぞれ時代の絢爛さを瑞々しく刻印している。
またその一方で、布地の流動性に呼応するかのように躍動感を伴う実験的な構図や技法が試みられた芸術的表現も見受けられ、ファッション写真に新鮮な眼差しを向ける作家独自の探究心が垣間見える。写真家・奈良原一高の活動に新たな角度から光を当てる展示となりそうだ。
- ■展示概要
- 奈良原一高個展「Fashion」
期間:2023年2月10日(金)〜3月11日(土) 12:00〜19:00- 休館日:日曜、月曜、祝祭日
- 会場:amanaTIGP
住所:東京都港区六本木5-17-1 AXISビル 2F- 電話:03-5575-5004
- ■同時開催
「境界をみつめて 奈良原一高写真展」
会期: 2023年2月4日(土)〜3月26日(日)
会場: 呉市立美術館(広島)- 「特集:新収蔵 奈良原一高の写真」
会期: 2023年2月11日(土・祝)〜5月7日(日)
会場: 和歌山県立近代美術館
【関連リンク】
https://www.takaishiigallery.com/jp/archives/28437/
出展者 | 奈良原一高 |
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会期 | 2023年2月10日(金)〜3月11日(土) |
会場名 | タカ・イシイギャラリー フォトグラフィー / フィルム |
※会期は変更や開催中止になる場合があります。各ギャラリーのWEBサイト等で最新の状況をご確認のうえ、お出かけください。
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