作者の渡邊耕一は、日本ではどこにでもある雑草「イタドリ」を追求して、ヨーロッパでは侵略的外来種となっている状況を写真とテキストでまとめた『Moving Plants』でデビューし、注目を集めた。学者やジャーナリストのような探求心でもって対象にせまる姿勢に渡邊の個性があるようだ。
本作『毒消草の夢 デトックスプランツ・ヒストリー』(青幻舎刊)は、コンタラエルハと呼ばれる、現在は存在しない薬草がテーマとなっている。江戸末期の蘭方医学書に「昆答刺越兒發」と記載されており、スペイン語の「コントルイェルバ」に由来するという。コントラは「(毒)を無効にする」、イェルバは「草」で、「コンタラエルハ」は「毒消草」だったといわれる。
今はないこの薬草を求めて渡邊はヨーロッパ、アメリカ、アジアの各国を尋ね、同じ名前を幾つもの植物が現れては消えていった。その探求の過程を写真とテキストで連ね、見る者の知的好奇心を刺激させる。
自然との共生がいわれて久しいが、人間もまた自然の一部であり、植物もまた生きていくパートナーとして存在してきた。人類と自然の根幹を見つめ直す気付きを与える本書は、他に類のない書物である。
- 『毒消草の夢 デトックスプランツ・ヒストリー』
- 著者:渡邊耕一
- 言語:日英併記
判型:A4変形・160頁・上製本- 価格:6,600円(税込)
- 出版社 : 青幻舎(2022年10月25日)
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