善本喜一郎による『東京DEEPタイムスリップ 1984⇔2022』(河出書房新社刊)は、タイトルにある通り、2022年の東京都内と1984年以降に同じ場所で撮影された過去の東京都内が、見開きでレイアウトされ、比較して見ることができるようになっている。過去と現在、同一の場所を見比べるという、写真の醍醐味が楽しめる1冊だ。
善本は広告分野の第一線で活躍しているが、自身のライフワークとしてこのシリーズを撮影してきた。前作『東京タイムスリップ 1984⇔2021』(河出書房新社刊)が2021年5月に刊行され話題を呼び、続編として本作が制作された。
1980年代の東京を見ると、戦後を引きずった断片がまだ残り、新宿や渋谷には猥雑さや場末感が漂っている。同時にバブル経済前夜の高度経済成長の頂点へ登りつめる過程の空気感も内包していて、変化していく時代の様相がうかがえる。
翻って2022年、コロナ禍の只中にある東京は再開発により洗練され、小綺麗に見え、虚構じみた感覚がそこかしこにある。街が生き物のように生々流転していることが、おのずと見えてくる。
写真は過去と未来を繋げる架け橋として現在を歩いている。そんな気付きを与えてくれる1冊になっている。
- 『東京DEEPタイムスリップ 1984⇔2022』
- 著者:善本喜一郎
- 出版社:河出書房新社
発売日:2022年3月15日- 判型:209×8×182mm・ソフトカバー・128ページ
- 価格:2,000円(税込)
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