『Dream Boat』は百々俊二と彼の長男・新、次男・武の三人の写真をまとめて1冊としている。親子二代にわたって写真家であり、世間での評価、実力も拮抗している三者。この三人が集まって本を出すとなれば、かなり大きなものになるではないかと思いきや、コンパクトなソフトカバーでまとめられ、やや意外な気がした。しかし、その内容は充実しており、ある意味、百々親子三人による「ベスト盤」ともいえる趣きを感じさせる。装幀を担当した間村俊一の感性が働いているようだ。
百々俊二は1947年生まれ。大阪のビジュアルアーツで講師を務め、彼の元から巣立った写真家は多数第一線で活躍している。そんな父を持つ新(1974年生まれ)、武(1977年生まれ)は、それぞれの自分たちの方法で写真を撮り続けている。新は木村伊兵衛賞を受賞後も広告の分野で活躍し、武は奈良で生活しながら、河瀬直美の映画にスチールで参加するなどして、それだけでも彼らの実力が伊達ではないことを証明している。
俊二の写真に対する評価はいまさら言うに及ばない。それでも息子ふたりと並べたとき、どう見えるか少し不安もあったが、ページを捲っていくうちにそんな杞憂はいつの間にか霧散し、1冊の本として成立していることに驚きを覚えた。
本を閉じてしばらくしてから、三人とも独自の視線を確立していることに気付いた。親子とはいえ、人間としては独立している。ただ二人の体には父のDNAが受け継がれているだろうが、それは身体を構成するだけの機能に過ぎない。父の撮ってきた写真を見つめつつ、新、武は独自の視線を獲得していった。それは細胞レベルだけではない、感受性と経験を踏まえて得たものであろう。
これは単純な親子のアルバムではない。三人の写真家による希有な作品集として成り立っている。
【関連リンク】
https://canon.jp/personal/experience/gallery/archive/dodo-dreamboat#anc-01
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