top コラム推すぜ!オリンパス第1回 ふたたび注目を集めているハーフ判カメラ 「オリンパス PEN S」

推すぜ!オリンパス

第1回 ふたたび注目を集めているハーフ判カメラ
「オリンパス PEN S」

2023/11/16
赤城耕一

オリンパスPEN S。1960年生まれだそうです。価格は8,800円とあります。初代のPENは6,000円だったようですが。ルックスは結構いいですね。ブラックボディもあったそうで、少しだけ欲しいですが、警察関係への納品された特別モデルと聞いています。伝聞なんで嘘の可能性もあります。

 

さてと、手持ちのフィルムニコンカメラも底を尽き、推すシリーズも次にいきます。
 

こうして“推すシリーズ” をはじめてみると、機種的にはアレもない、これも足りないとなるのですが、ドラえもんのポケットでもなし、もちろんカメラ博物館を作るつもりもなし。誰がなんと言おうが、筆者が独断と偏見で選んだ好きなカメラ、思い入れのあるものだけを推すまでであります。
 

だから本連載では、義務的にメーカーのすべての機種をコンプリートして紹介しようというものでもなく、筆者が嫌いな気に食わない機種とかは出てこないわけです。
 

筆者もおぼろげに行き先が見えてきたお年頃でありまして、一部のカメラは実際に整理、断捨離をはじめておりますし、これからもチカラ抜いて適当にヤることにします。
 

あ、例によって本連載は資料的な価値はまったくありませんが、登場する機種は、過去筆者がなんらかの写真制作をするために使用した機種であることは間違いなく、フィーリングの感想程度はお伝えすることが可能です。もちろん忘れていることも多々あり、すべて自信を持って語れるというわけじゃありませんが。
 

では、今回からはオリンパスに行こうと思います。会社も変わってしまったので「推すぜOM」としたほうがタイトルはキレーだけど、やはりフィルムカメラでは「オリンパス」は栄光のブランドでありますからねえ「推すぜ!オリンパス」にします。

初期型か、それとも突然変異か、初代PENに搭載されたDズイコー2.8cm F3.5レンズを搭載したPEN Sもあるんですよね。レンズを明るくするために用意されたという本機の存在意義が薄まりますよね。筆者はヲタクですから当然これも所有しています。3cm F2.8とどっちがよく写るか?ですか。そんなのわかるわけないじゃないですか。

 

最初はPENシリーズですね。言うまでもないハーフサイズの決定的なカメラであります。フィルムが高価な時代に、フォーマットを24×18mmとすることで、規定枚数の倍の量が撮れるというすばらしさ。ハーフサイズというと安っぽいイメージがありますが、これ映画のシネサイズと同じであります。現在、ふたたびフィルムが高価になりましたので、ハーフサイズカメラは見直されているそうです。

 


手動式のフィルムカウンターです。72枚まで刻まれています。デジカメだと瞬時に終わる枚数ですが、PENに装填すると、 一年くらい使えたりするわけです。スキーと海水浴が同じ1本のフィルムに写っているという笑い話ありましたね。それくらいフィルムで撮影するって労力が必要なんじゃないかと。

 

筆者も貧しいので、フィルムが節約できるのはありがたいと考えています。でもハーフサイズカメラは一部を除けばあたりまえだけど、デフォルトにカメラを構えると縦位置になりますよね。
 

これね、少し慣れが必要なんですよね。縦位置ですと、おまえは最初から世界を“断定” して切り取るつもりなのかよ。という縛りを少し感じますが、縦位置の動画すら違和感なく受け入れられるいま、つまらない理屈を言ってもしかたがないのかもしれません。

 


巻き戻しノブ、クランク共に金属製だったりします。質感に手を抜かないのは偉いですよね。軽いカメラですが、意外に凝縮感あるんですよね。

 

うちにあるPENシリーズで、稼働率が高いのは、今回紹介するPEN Sです。あまりにも小さいので、たまに行方不明になったりするのですが、しばらくすると意外なところからひょっこり出てきたりします。どこにでも収納できる、どこにでも持ち歩けるサイズであります。

 


カメラの底部です。良い感じの作り込みです。裏蓋は脱着式で大きなキーがあります。Rボタンも大きいです。レンズシャッターはコパル製であります。

 

ハーフサイズコンパクト初代の「オリンパスPEN」は搭載レンズが2.8cmF3.5でした。これよりももっと明るいレンズが欲しいという要望があったから開発されたとありますが嘘くさいですね。それは先に挙げた写真を見るとわかります。
 

ま、いいでしょう。とりあえずリクエストに応えて、1960年に登場するPEN Sは新しいシャッター、新設計レンズを採用したDズイコー3cm F2.8を搭載しています。

 


かなり評価の高いズイコーD 3cm F2.8。フォーマットが小さいカメラはネガからプリントをするとき拡大率が大きくなるわけですから、当然のことながら35mm判のレンズよりも数値性能は高いんです。中でも、このレンズは相当に気を使われた設計だと思います。

 

レンズのF値が半段程度明るくなっても喜ばれるというのは当時のフィルムの感度事情がわかるというものでありますね。
 

本機は露出計もなく、距離計もないフルメカニカルカメラです。本気で撮影するためには単独の距離計や露出計が必要になるはずです。

 

最高シャッター速度は1/250秒であります。ISO400フィルムで日中晴天で順光での撮影だと絞りは常にF16なんてことになり、みんなパンフォーカス写真になりますね。それでいいのか。5mと2mの指標は赤色です。

 

搭載レンズの焦点距離が短いから被写界深度が深い、つまり目測でも大きくフォーカスを外すことなく、なんとか鑑賞に耐えるであろうという考え方、露出値はフィルムの箱に書いてあるから大丈夫だと割り切った認識をもって本機は開発されたに違いありません。ちなみに距離計のほうはカメラのサイズに合わせた小さな外付けの「PENメーター」がアクセサリーとして用意されたらしいですが、筆者は実物を見たことがありません。中古市場で出てきたら珍品かもしれません。
 

当時それなりにPENが受け入れられたのはレンズの性能が高く、うまくハマれば大サイズのプリントにも耐えたからではないでしょうか。

 


裏蓋を取り外してみます。フィルム装填時にこの裏蓋はどこに置くのか謎になったりします。フィルム装填時は胸のポケットに入れるのが正しいお作法なんでしょうか。

 

逆にAEを搭載せず、バッテリーいらずなので、プロも使用できるコンパクトカメラという考え方もあったようで、とくに報道カメラマンのサブ機として活躍したという記録もあります。目立たず、シャッター音が小さいということもメリットになりました。民俗学者の宮本常一の愛機だったことでも有名なのです。
 

いま「写ルンです」が人気ですが、これは単速シャッタースピードと絞り固定でも問題ない写真を制作することができます。なにせ「レンズ付きフィルム」ですからねえ、メカは最低限でも大丈夫なんです。

 


フィルム巻き上げギアですかね。写ルンですのそれみたいでしょ。連続撮影すると親指の腹が赤くなります。でも意外とちゃんと調整されたPENって、コマ間揃ってますよね。そこはエラいですね。

 

ラチチュードの広いカラーネガフィルムを使えば、PEN Sのようにシンプルな最低限の機構しかなくて、しかもAE機でなくても、まったく問題はないわけです。高感度カラーネガフィルムも粒状性は素晴らしく向上し、高い解像力を有していますから、PEN登場当時よりも余裕をもって、大きなプリントを制作できるんじゃないかなあ。

 


かなり評価の高いズイコーD 3cm F2.8。フォーマットが小さいカメラはネガからプリントをするとき拡大率が大きくなるわけですから、当然のことながら35mm判のレンズよりも数値性能は高いんです。中でも、このレンズは相当に気を使われた設計だと思います。

 

フィルムが高価な時代だからこそ、PEN Sはふたたび注目を集めているというわけです。可愛いデザインですから若い女子にも人気のカメラであります。

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