大阪で活動する写真家、阿部淳、山田省吾、野口靖子をメンバーとして写真集の出版を行っているVacuum Press。主にメンバー個人の写真集を刊行しているが、不定期で刊行される『VACUUM』はゲスト写真家を数人迎え、オムニバス形式で構成されている。仕上がりサイズはA4で、折り加工したものに輪ゴムで綴じるでという手作り感が魅力でもある。
写真はストリートスナップで、全編裁ち落とし。撮影者のクレジットはページ左下に記載されているが、ページをめくっているうちに見落として、そのまま通過していまいそうだ。そのためか、スナップの洪水を見ているような感覚になる。
今号ではメンバーの阿部淳も参加している。彼は長年大阪の街を中心にスナップを続けてきたが、他の参加者も呼応するようにストリートで大胆にシャッターを押しているのが伝わってくる。プライバシーの観点から街での撮影が難しいという話題がされるようになって、すでに久しい。だが、視線というものにはどこか暴力性が潜んでいる。カメラという視線に特化した機械装置を街中で持つことは、それだけで異物感が生じる。そしてカメラを手にする者は、自分と世界との間に違和感を覚えた瞬間にシャッターを押す。ここに写真行為の原点があるように思える。
ストリートスナップは写真だけにしか為しえない表現である。ある意味、写真がもつ最大の醍醐味ともいえる。『VACUUM06』は造本も含め、いい意味でのラフさが写真の面白さを伝えてくれる。
『VACCUM06』
価格:2,500円(税別)
発行:2022年7月10日
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