top 本と展示写真集紹介『迷幻街 サイケデリックストリート』杉浦正和

『迷幻街 サイケデリックストリート』杉浦正和

2022/07/01
髙橋義隆

混沌とした街路、猥雑な光景、過剰なエネルギーに満ちた様相…、杉浦正和の『迷幻街 サイケデリックストリート』(蒼穹舎)は写真の魅力が充溢した作品集である。


本作は杉浦のあとがきに寄れば、2019年から2020年にかけてベトナムにおいて、コロナ禍の直前から感染が拡大しはじめた頃までに撮影されたようだ。マスクをすることが常識となった日々を2年強過ごしているせいか、素顔を晒した光景が新鮮に見えてくる。


杉浦はこれまでも何冊か写真集を発表しているが、その多くが国内であり、モノクロのイメージでスタティックに被写体と向き合ってきたものが多い。対して本作は色彩に覆われた異国の街で撮影されている。


一見ストリートスナップのような体裁だが、計算されたフレーミングで構成され、感覚値に頼ったスナップとは対極にある。過剰な情報にあふれ、焦点が定まりにくい場所も画角に納め、見所をおさえている。

 

本書にある写真から街の様子を見る限り、生命力の強さに溢れ、閉塞するばかりの日本と比べるとその活気に気圧されそうだ。同時に人間がもつエネルギーが遺憾なく発揮されているように感じられ、ベトナムの街に次世代のあるべき姿が潜んでいるように直感した。もしかしたら、杉浦の目には来たる時代の幻像が垣間見えたのかもしれない。(髙橋義隆)

 

書名:『迷幻街 サイケデリックストリート』

著者:杉浦正和

定価:4,000円+税
発行日:2022年5月5日
サイズ・仕様:A4変型、上製本、カラー
ページ数:94
作品点数:86点

編集:大田通貴
装幀:加藤勝也

発行元:蒼穹舎

 

【写真家プロフィール】

杉浦正和(すぎうら・まさかず)
1960年京都生まれ。2009年写真集『ルモンタージュ』(蒼穹舎)。2015年写真集『櫻花行』(蒼穹舎)。展示多数。

 

【関連リンク】

http://www.sokyusha.com/detail/pg3527708.html

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