ウィーンに拠点を置くオークションハウスのライツ・フォトグラフィカ・オークションは、歴史的に価値のあるカメラ関連製品を専門に取り扱う「ライツ・フォトグラフィカ・オークション」を定期的に開催している。「ライツ・フォトグラフィカ・オークション」では非常に希少なアイテムから特別限定モデル、プロトタイプまでユニークな来歴を有するアイテムが常時出品されており、貴重なアイテムを出品・入手できる場として世界中のコレクターに認知されている。
去る11月22日、第47回「ライツ・フォトグラフィカ・オークション」がウィーンのホテル・インペリアルにて開催された。

今回出品された希少なアイテムのひとつには、前ローマ教皇フランシスコ(1936-2025)が所有していたライカのカメラがあった。予想落札価格は6万~7万ユーロだったが、最終的に650万ユーロで落札された。その他にも、イギリスの前女王エリザベス2世(1926-2022)へ献上された特別デザインの「ライカM3」や希少価値が高いブラックペイント仕上げの「ライカMP」が大きな注目を集めた。
前ローマ教皇フランシスコは、長年にわたり人道主義を説きながら社会問題へ積極的に関わり続けた。ライカはその功績を称えて、特別デザインの「ライカM-A」と「ライカ ノクティルックスM f1.2/50 ASPH.」のセットを2024年に献上した。
「これらのカメラとレンズには、シリアルナンバー『5000000』が刻印されている。ライカでは、特別な個体に区切りの良いシリアルナンバーを付与するという慣習が長年続けられている。そうした特別な個体は著名人に贈呈されるケースが多いです」ライカカメラ・クラシックス社とライツ・フォトグラフィカ・オークションの社長を務めるアレクサンダー・セドラクは語る。

慈善活動への支援にも精力的に取り組んでいたことから、フランシスコ前教皇は献上されたライカのカメラとレンズのセットをチャリティーアイテムとしてオークションに出品し、その落札金を全額、援助を必要としている人々を救済する目的で寄付することにした。「このアイテムを今回、チャリティーアイテムとして提供できたことを光栄に思います。このアイテムについては、通常、落札金額に応じて設定しているオークションハウスの手数料を徴収しないことにした。落札金650万ユーロは、全額がフランシスコ前教皇の慈善団体に寄付されます」とセドラクは語っている。

メディアにも頻繁に登場する著名人で、今回オークショニアを務めたヴォルフガング・パウリッチが競売開始を告げる頃にはすでに予想落札価格の6万~7万ユーロを超える事前入札が数件あった。その後、落札まで激しい入札合戦が繰り広げられた。「私たちが開催した過去のオークションの中でも最も白熱した入札合戦のひとつだったのは間違いありません。それゆえに、あれほどの高値がこの特別なアイテムについたのです」とセドラクは述べている。
■女王へのギフト、報道写真用のカメラ、「ルクサス」にも高値が

著名人のために製造されたとある1台のカメラも、今回のオークションのハイライトのひとつだ。
そのカメラとは、新たに誕生したドイツ連邦共和国(西ドイツ)のテオドール・ホイス初代連邦大統領が1958年10月に当時のイギリス女王だったエリザベス2世に外交上のギフトとして献上した「ライカM3」です。実はライカは紛失した際の予備として、同じカメラをもう1台製造した。今回出品されたのはその予備機で、エリザベス女王のイニシャルである「E II R」がトップカバーに、「エリザベス女王陛下へ – 1958年10月20日 – テオドール・ホイス」という文言のドイツ語 がベースプレートにそれぞれ刻印されている。予想落札価格が9万~12万ユーロだったこのアイテムは、15万6,000ユーロ(落札手数料を含む)で落札された。

今回のオークションはブラックペイントの「ライカMP」の人気が依然として高いことが改めて実感できるものでもあった。
“M Professional”を意味する「ライカMP」はルポルタージュ撮影用に開発され、1956年に初登場したモデルで、数多くの報道写真家に愛用された。このときライツ社によって製造された「ライカMP」はわずか412台で、そのうちブラックペイントは141台しかなかった。今回出品されたのはシリアルナンバーが「MP-114」の個体で、予想落札価格は70万~80万ユーロでしたが、結果は90万ユーロ(落札手数料を含む)での落札となった。

オークション開始後間もなく登場したアイテムも今回のハイライトのひとつだ。
そのアイテムとはロット番号7の「Leica I Mod. A Luxus special outfit」。1929年に製造が開始され、わずか95台しか製造されなかった“ルクサス(ラグジュアリーの意)”は現存するのが数台のみと非常に希少。今回出品されたのはその中の1台で、1929年に製造されたシリアルナンバー「34808」の個体だ。「special」と名付けられているのは、付属しているアクセサリーが主な理由。このアイテムには今回、同じ外観デザインの「ルクサス」双眼鏡3×20と、ゴールドのメッキが施された「ライツ・フィノット」ケーブルレリーズ と「フォファー・ルクサス」距離計が付属しており、4点セットとしてオークションに出品されたのは今回が初めてだった。そうした珍しさから、30万~36万ユーロでの落札が予想されていたが、最終的には36万ユーロ(落札手数料を含む)で落札された。
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