top 本と展示展覧会ピックアップ東京国立のZEIT-FOTO kunitachiで樋口佳絵・須田一政「かくれんぼ」が開催

東京国立のZEIT-FOTO kunitachiで樋口佳絵・須田一政「かくれんぼ」が開催

2025/09/28

^{左:樋口佳絵「予知夢でしょうか」2015 年 ©Kae Higuchi}
^{右:須田一政「風姿花伝」より、静岡・天城湯ヶ野1971年 ©SUDA ISSEIWorks}

東京国立のZEIT-FOTO kunitachiで樋口佳絵・須田一政「かくれんぼ」が開催される。

樋口佳絵は仙台在住の画家で、テンペラ油画というハイブリッドな技法を独自に展開している。本来この技法は15世紀頃の西洋宗教画に見られる艶やかな細密描写に用いられるが、樋口は漆喰のようなマットな質感を残し、艶を要所に絞ることで、透明感と奥行きを与えている。その効果は単なる立体感の強調ではなく、むしろ描かれた存在や場面の意味に作用し、見るものを深い内奥へと誘う。これは、異界や彼岸といった別世界を想起させる作品で高い評価を得てきた写真家・須田一政の表現と呼応するものだ。

樋口の作品は、淡い色を薄く重ねることで生まれる軽やかな空気に包まれている。幻想的でありながら日常の延長線上にあるような場面には子供が多く登場するが、描かれるのはいずれも断片で余白があり、「もう一度振り返りたい」という気持ちにさせる。一方で、須田の作品は、事物を白く浮かび上がらせる黒い陰にこそ余韻が宿り、その奥へと視線を引き込まれる。

本展では、樋口のテンペラ油画による平面作品を中心に、ここ20年間の活動を振り返る作品が集う。須田からは、不朽の名作《風姿花伝》《物草拾遺》に加え、学生時代に作られたデビュー前作品を含むヴィンテージ・プリントを中心に多数展示する。

■展覧会情報
樋口佳絵・須田一政「かくれんぼ」
会期：2025年10月4日（土）～11月8日（土）
時間：金曜15:00〜20:00／土曜11:00〜18:00／火曜・水曜・木曜はアポイントメントのみ
※10月5日（日）、12日（日）、13日（祝）、19日（日）は11:00〜18:00で営業
休廊日：日曜日、月曜日
会場：ZEIT-FOTO kunitachi
住所：東京都国立市中2-22-33

■Kunitachi Art Center 関連企画特別レクチャー

「修復家の仕事とは？ー写真の場合ー」　
登壇：白岩洋子（白岩修復工房）
日時：2025年10月12日（日）14:30〜16:00　　　
参加費：1,000円
定員：20人（メールにて要予約）

■プロフィール
須田一政（すだ・いっせい）
1940年東京生まれ、2019年没。東京綜合写真専門学校卒、1976年「風姿花伝」により日本写真協会新人賞受賞1983年写真展「物草拾遺」等により日本写真協会年度賞受賞、1985年写真展「日常の断片」等により第1回東川賞受賞、1997年写真集「人間の記憶」により第16回土門拳賞受賞

樋口佳絵（ひぐち・かえ）
1975年仙台市生まれ、仙台在住。
東北生活文化大学卒、2005年宮城県芸術選奨新人賞受賞

白岩洋子（しらいわ・ようこ）
上智大学フランス文学科卒業後、イギリスの美術商に勤務。その後、美術品修復を学ぶため再渡英し、ロンドン芸術大学で紙作品修復のディプロマを取得。続けて現地で写真修復を学ぶ。帰国後は株式会社絵画保存研究所に勤務し、2010年に「白岩修復工房」を設立。紙作品や写真の修復を専門としており、国内外のワークショップや翻訳にも携わる。訳書に『写真技法と保存の知識』（青幻舎、2017年）。

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