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top 本と展示展覧会ピックアップ東京青山のカッシーナ・イクスシー青山本展で石塚元太良「BAUをめぐる冒険」が開催

東京青山のカッシーナ・イクスシー青山本展で石塚元太良「BAUをめぐる冒険」が開催

2025/09/26

石塚元太良「BAUをめぐる冒険」©Gentato Ishizuka

 

東京青山のカッシーナ・イクスシー青山本展で石塚元太良「BAUをめぐる冒険」が開催される。
 
本展では、現代写真の表現領域を拡張し続ける石塚氏が取り組んでいる建築写真を中心に、過去の代表作から最新作までおよそ10作品を展示する。写真というメディウムを通して空間や時間の奥行きを可視化しようとする、石塚氏ならではの視点で名作建築を体感できる貴重な機会だ。
 
タイトルにある“Bau”とは、ドイツ語で「建築」「構造」を意味する。石塚氏はこの言葉を手がかりに、世界各地のモダン建築を旅してきた。その過程で出会ったラ・トゥーレット修道院を契機に生まれたのが、作品《Ondulatoire》(個展 Kotaro Nukaga Roppongi, 2023)だ。そこでは「音楽としての建築」という視点から、光と影が織りなす瞬間や、建築に内在する時間性を写真として定着させる試みが展開された。
今回の「BAUをめぐる冒険」は、その探究をさらに発展させると同時に、《Ondulatoire》に次ぐ新たなモチーフを探す旅でもある。
 
石塚氏がフィルムカメラでとらえた名作建築は、単なるドキュメンテーションではなく、空間の「質感」や「記憶」までも写し取るような深いまなざしに満ちている。構図の精緻さと光の捉え方、そして時に物質の表面をなぞるようなアプローチにより、被写体である建築そのものが語り始める——そんな石塚作品の魅力が、空間展示として立ち現れる。
展示では、ル・コルビュジエ、フランク・ロイド・ライトといった近代建築の巨匠たちの作品を撮影したシリーズに加え、ライフワークとして定期的に撮影に訪れているアラスカの氷河の作品も公開。SNSやデジタルイメージが加速度的に流通する現代において、写真が持つ「空間性」や「物質性」を再定義しようとする、石塚氏の試みに触れることができる。
 
店内には、カッシーナによるル・コルビュジエ、ピエール・ジャンヌレ、シャルロット・ぺリアンのコレクション復刻60周年を記念したリミテッドエディションも展示。石塚氏の作品と共に、モダニズム建築と家具、そして写真表現との豊かな対話を体感してほしい。

 

  • ■展覧会情報
    石塚元太良「BAUをめぐる冒険」
    会期:2025年10月2日(木)~10月14日(火)
    時間:11:00〜18:00
    休廊日:水曜日
    会場:カッシーナ・イクスシー青山本展
    住所:東京都港区南青山2-12-14 ユニマット青山ビル1、2、3F

 

■プロフィール
石塚元太良(いしづか・げんたろう)
1977年、東京生まれ。
2004年に日本写真家協会賞新人賞を受賞し、その後2011年文化庁在外芸術家派遣員に選ばれる。初期の作品では、ドキュメンタリーとアートを横断するような手法を用い、その集大成ともいえる写真集『PIPELINE ICELAND/ALASKA』(講談社刊)で2014年度東川写真新人作家賞を受賞。また、2016年にSteidl Book Award Japanでグランプリを受賞し、写真集『GOLD RUSH ALASKA』がドイツのSteidl社から出版される予定。2019年には、ポーラ美術館で開催された「シンコペーション:世紀の巨匠たちと現代アート」展で、セザンヌやマグリットなどの近代絵画と比較するように配置されたインスタレーションで話題を呼んだ。2023年国立新美術館で行われた「Domani:明日展」でメインビジュアルを担当。近年は、暗室で露光した印画紙を用いた立体作品や、多層に印画紙を編み込んだモザイク状の作品など、写真が平易な情報のみに終始してしまうSNS時代に写真表現の空間性の再解釈を試みている。
 
【関連リンク】
https://www.cassina-ixc.jp/index.html

展覧会概要

出展者 石塚元太良
会期 2025年10月2日(木)~10月14日(火)

※会期は変更や開催中止になる場合があります。各ギャラリーのWEBサイト等で最新の状況をご確認のうえ、お出かけください。

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