山田淳子『わたしの百人の祖父母たち 北方領土・元島民の肖像』が北海道新聞社より刊行された。
北方領土元島民3世の著者による写真ルポルタージュ。100人の元島民を訪ね歩き、島の学校に通い、昆布を干し、旧ソ連兵の侵攻に翻弄された幼少期の記憶をポートレートとともに焼き付けた。戦後80年を越えて引き継ぐ「私たちの戦争」。解説は小泉悠。
(2025年9月にOM SYSTEN PLAZAでの展示の際に寄せたテキストより)
- 私の祖父は昭和二十年秋まで現在は北方領土とよばれている歯舞群島の志発島で漁師として暮らしていたが、昭和二十年九月に旧ソ連兵の侵攻により島を脱出し、その後は一度も島に帰ることなく亡くなった。
私は祖父から一度も島の話を聞いたことはない。家族から祖父が北方領土にいたことは聞いていたが、ずっと忘れていた。
自分のルーツを知るために釧路へ元島民である父の従兄弟に会いに行った時に「元島民に会って話を聞いて写真を撮る」ことを決めた。
祖父はなぜ島のことを話さずに亡くなったのか、それを知る術はもうない。しかし元島民に会って当時の話を聞くことはきっと祖父の記憶と重なるものがあるのではないかと思っている。
2025年は昭和100年であり、戦後80年を迎える年である。元島民の平均年齢は89歳を超え、存命の島民の数は5,000人を切っている。
2019年から撮影を始めて6年で100余人の元島民の撮影を終えた。今回はこの元島民たちのポートレートを中心に展示をする。
■プロフィール
山田淳子(やまだ・じゅんこ)
1982年富山県生まれ
2006年 京都府立大学大学院 文学研究科 修士課程 国際文化学科 東アジア文化交流専攻 修了
2017年 北星学園余市高等学校存続写真冊子「いまを、生きる」(撮影カメラマン:戸澤裕司)の制作および関連写真展の企画を担当
2020年より「島々の記憶」と題した写真展を東京、大阪、富山、北海道などで開催
2025年8月北海道新聞社より写真文集「わたしの百人の祖父母たちー北方領土・元島民の肖像―」を刊行。
- 山田淳子『わたしの百人の祖父母たち 北方領土・元島民の肖像』
- 発売日:2025年9月6日
- 発行:北海道新聞社
- 解説:小泉 悠
- 判型:A5判
ページ数:192ページ- 定価:2,750円(税込)
【関連リンク】
https://shop.hokkaido-np.co.jp/Form/Product/ProductDetail.aspx?shop=0&pid=bk128901&bid=book
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