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時津剛『空氣 Atmosphere』

2025/09/12
髙橋義隆

時津剛『空氣 Atmosphere』が刊行された。
 
以下、あとがきから引用する。

 

2025年、日本は敗戦から80年、そして「昭和100年」という節目を迎えた。戦争と敗戦、高度成長からバブル経済という激動の昭和から、平成、令和へと、ゆるやかに続く平和な「戦後」。しかし、昭和天皇崩御、東日本大震災、コロナ禍など、社会をゆるがす出来事のたびに顔をだす同調圧力と全体主義は、平穏な時代の影にひそむ、戦中の空気ではなかっただろうか。
 
戦中・戦後の新聞と、かつての軍国主義を支えた国家神道の象徴であり、国民を戦争遂行へと導く装置として機能した靖国神社、そして東日本大震災やコロナ禍などの写真を重ね合わせた。ポラロイド写真の曖昧な画像によって時間(時代)的要素を排除し、現在と過去との視覚的な相似点を見いだすことで、戦中・戦後を通して日本社会が抱える潜在的な空気を可視化する試みである。
 
戦争の記憶が遠のく中、世界では自国第一主義や排他主義、ポピュリズム、そして、それらが生み出す深い分断が広がり、戦争へとひた走った1930年代との相似を前に、「新しい戦前」という言葉も聞かれるようになった。
「未来が過去を規定し、現在を生成する」。ドイツの哲学者・マルティン・ハイデガーの言葉だ。未来からの視点によって現在のありようが決まり、結果次第で過去の出来事への解釈が変わるという。
 
未来は今を「戦後」と規定し続けるだろうか。

 

■プロフィール
時津 剛(ときつ・たけし)
1976年、長崎市生まれ。東京都立大学法学部政治学科卒。都市や人、現代社会をテーマに作品制作を続けている。東京都在住。
https://www.takeshitokitsu.com
 
▼写真展
「空氣 Atmosphere」2025年、PlaceM
「BEHIND THE BLUE」2025年、KYOTOGRAPHIE(京都国際写真祭)KG+SELECT 2024年、ニコンサロン
「東京自粛 COVID-19 SELF-RESTRAINT, TOKYO」2020年、PlaceM
「45 seconds」2019年、nagune
「CELL」2018年、ソニーイメージングギャラリー銀座
「DAYS FUKUSHIMA」2012年、銀座ニコンサロン 2013年、大阪ニコンサロン
 
▼写真集
『空氣 Atmosphere』2025年
『BEHIND THE BLUE』2024年
『東京自粛 COVID-19 SELF-RESTRAINT, TOKYO』(PLEASE)2020年

 

  • 時津 剛『空氣 Atmosphere』
    編集・出版:時津 剛
    ブックデザイン:中島優太
    翻訳:デーナ・ルイス
  • 仕様:260×180mm、箱入り
  • 出典:朝日新聞
    印刷:株式会社イニュニック
  • 価格:5,500円(税込)

 

【関連リンク】
https://www.placem.com/schedule/2025/main/20250804/exhibition.php

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