細江英公、川田喜久治は1959年に設立された写真家集団『Vivo』に参加。同じく参加していた東松照明、奈良原一高らとともに、日本における戦後の写真表現において多大な影響を与えてきた。
今回刊行された細江の写真集は、2021年7月から12月まで清里フォトアートミュージアムで開催中の大規模な回顧展に伴い出版された。国際的に著名な学芸員、研究者である中森康文氏(テート美術館インターナショナルアート部門(写真)シニア・キュレーター)の協力を得て完成、細江英公に関する最も重要な資料と言える。
作者のこれまでの活動を総括する本作品集では、主要なシリーズだけでなく、作家、批評家、ダンサー、アーティストらを写したポートレート作品が紹介されている。さらに、作品に対する新たな視点を与えてくれる2つのエッセイと、三島由紀夫や瀧口修造など、作家や批評家による細江英公に関する独創性溢れるテキストが再録されている。本書は、細江英公のその幅広い活動により、戦後の日本の美術、写真、舞踏、文学の分野における重要なアーティストたちについても伝える一冊として仕上がっている。
一方、川田喜久治の作品集は、日本写真史の金字塔として名高い『地図』を再構築したものである。グラフィックデザイナー杉浦康平の装丁によるオリジナル版は1965年の刊行。以来2005年と2014年に復刻版が出版されている。
2001年秋には、ニューヨーク公共図書館が、極めて貴重な『地図』の構想模型(マケット)を収蔵している。マケットは川田の手製であり、写真集とほぼ同じ作品が収録されているが、イメージのトリミングや階調、向きなどにバリエーションがある。より大きな違いは2分冊の装丁であり、サイズも出版本の2倍近くある。
写真のページには、ごく薄い、複写用の印画紙が使われ、写真同士が貼り合わされている。出版本にある観音開きのページを開いていく形式とは異なり、どれも断ち切りの激しいイメージが連続して現れる。
本書は、この2冊本のマケットの精緻な復元であり、ジョシュア・チュアン(Joshua Chuang / ニューヨーク公共図書館ウォラック記念アート部門アソシエート・ディレクター)とヒントン実結枝(アート・リサーチャー)による研究論文に加え、初版本の写真集『地図』の制作をめぐる川田自身の詳細なインタビューを藤森愛実の和訳による日英併記で収録している。
◉EIKOH HOSOE by Yasufumi Nakamori [JAPANESE EDITION]
https://ja.twelve-books.com/products/eikoh-hosoe-by-yasufumi-nakamori-japanese-edition
サインあり:11,000円(税込)
サインなし:9,900円(税込)
◉CHIZU by Kikuji Kawada [MAQUETTE EDITION]
https://ja.twelve-books.com/collections/preorder/products/chizu-by-kikuji-kawada
サイン入A:JAPANESE SIGNED EDITION(川田さん直筆サイン本)22,000円(税込)
サイン入B:SIGNED PLATE EDITION(サインプレート版)22,000円(税込)
サインなし:UNSIGNED EDITION 18,700円(税込)
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