落合由利子写真集『東欧1989 EASTERN EUROPE』がプルナブックスより刊行された。
1989年、東京で写真家として活動していた落合由利子は、ベルリンの壁崩壊のニュースを聞きインスピレーションを得ます。ヴィム・ヴェンダースの映画『ベルリン・天使の詩』に触発されたイメージ──ベルリンの壁の前を歩く天使の姿──でした。
映画の中で永遠を生きていた天使が人間になることを望んだことと、テレビから流れ出るニュース映像の傍観者でいることで感じる違和感が重なり、その土地や人々に出会って、話して、その手に触れたいという思いで、落合は現地を訪れることにしたのです。
落合が撮りたかったものは、新聞やテレビで報じられる社会主義崩壊という物語の登場人物ではなく、新たな日常を生きるごく普通の人びとの存在でした。
ベルリンを振り出しにチェコスロヴァキア、ハンガリー、ルーマニア、ブルガリアを3カ月間かけて旅した落合が見たもの。それが「東欧1989 EASTERN EUROPE」です。
落合の写真をいま見ることは、当時の人びとを思うことであると同時に、その後の人びとの人生を想像することでもあります。ある人にとっては当時の記憶に照らし合わせ、その頃まだ生まれていなかった人にとっては歴史の出来事として、それぞれがこの時代と現在について考えるきっかけになることを願っています。
タカザワケンジ(写真評論家・IG Photo Galleryディレクター)
■プロフィール
落合由利子(おちあい・ゆりこ)
1963年埼玉県生まれ。写真家。日本大学芸術学部写真学科卒。1989年ベルリンの壁崩壊直後にその時代に生きる人間の存在を写真に留めるべく東欧諸国を巡り、自給自足を基盤とする人間の根源的な生活を求めてルーマニアの山間の村で暮らしながら写真を撮る。写真に出会った頃から生活と写真を一つにしたいと思ってきた。それは自分がわかりたいこと、確認していきたいことを、写真を通して表現していくということ。
著書に『働くこと育てること』(草土文化、2001年)、『絹ばあちゃんと90年の旅 幻の旧満州に生きて』(講談社、2005年)。共著に『ときをためる暮らし』(文藝春秋/自然食通信社、2012年)、『若者から若者への手紙1945←2015』(ころから、2015年)ほかがある。
- 落合由利子『東欧1989 EASTERN EUROPE』
- 刊行日:2025年4月
発行所:プルナブックス- 寄稿:毛利嘉孝
- デザイン:安田真奈己
仕様:210×265mm、ハードカバー・クロス装、116ページ、掲載作品81点- 印刷:株式会社サンエムカラー
- 価格:8,000円(税込)
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